貴景勝　勝つときは理由がわからないこともあるけど、負けるときには絶対に原因があります。今回の敗因は……あるんですけど、今後も戦っていく力士ですし、言っちゃうと今後にも影響が出るのでここでは伏せておきます。ただ、どれだけ嘆いたって、リセットして九日目をもう一回やらせてはもらえないので、負けた後は、意外と「悔しかったら次の相撲で頑張れよ」くらいにしか思っていなかったですね。自分のなかでは“切り替え”というより、そもそも負けたからといって、引きずる必要がまったくないと思っているんです。次は相手が違うし、今日負けてもまた明日頑張ればいい。精神が追い詰められると力は発揮できないので、「明日はなんとかなる」くらいの図太い精神も必要なのかなと思います。

「やっぱり、最後の3日間が一番大事」

――なるほど、よく「気持ちの切り替え」といわれますが、大関はそもそも負けを悲観しない精神状態でいらっしゃるんですね。では、十日目以降、優勝を意識したのはいつくらいからでしたか。

年明けの初場所へ向け稽古を再開した貴景勝　©Jiji Press［日本相撲協会提供］

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貴景勝　最後の2～3日くらいかなあ。やっぱり、最後の3日間が一番大事なんです。そこで逆転もできるし逆転もされるし、対戦相手も番付が上のほうの力士になってくるわけですから。でも今場所は、十二日目くらいまでは優勝争いも何もないなと思っていましたね。ここから3日間で、誰がどう抜け出すのかなあという感じでした。

――ご自身も絡んでいながら、とても冷静に、客観的に考えていたんですね。

貴景勝　あんまり「優勝だ」とかは考えていないです。勝てば優勝につながるので、一生懸命やれればそれでいいと思っていました。

――単独トップで迎えた千秋楽は、どのように臨みましたか。

貴景勝　いつも通り集中して自分の相撲をやり切ろうというだけです。勝てば優勝、負けたら決定戦とか、状況はいろいろあったけど、とにかく集中し切って力を出せればいいなと、それだけでした。

「勝因は？」とよく聞かれるんですけど……

――本割で照ノ富士関に敗れましたが、決定戦では大関の良さがすべて出た会心の一番で勝利し、優勝を手にしました。技術面・精神面での勝因はなんだったのでしょうか。

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