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「何と戦っているんだ」なぜ萩野公介はこの言葉で変われたのか…リオ五輪金メダリストの復活
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2021/01/03 11:00
東京アクアティクスセンターで行われた競泳の日本選手権、男子400m個人メドレーを4分13秒32で制した萩野公介
重苦しい表情が深刻さを表していた
「体調かメンタルなのか、総合的なものかもしれないですが、本人は分からないと言っています」
重苦しい表情が深刻さを表していた。
同月の海外合宿は参加せず、4月の日本選手権も欠場。休養ののち復帰するが調子は上がらない。
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年が明けても変わらなかった。
2020年2月、コナミオープンは400m個人メドレーで自己ベストに14秒以上遅れて4位。200m個人メドレーは2位だったが派遣標準記録に届かず。
東京五輪代表選考会である2020年4月の日本選手権が近づいていた。
ただ、この大会で印象的な言葉があった。
「それ以外のものと戦ってしまっていたような」
大会を前にしたミーティングで、平井コーチから言われた。
「お前たちは何と戦っているんだ」
そのエピソードを明かしたあと、萩野は続けた。
「泳ぎを1つひとつ突き詰めるのではなく、それ以外のものと戦ってしまっていたような感じでした」
200m個人メドレーのレース後のことだ。400m個人メドレー後と打って変わって何か抜け落ちたような表情とともに、かすかな手掛かりをつかんだようだった。
その後、東京五輪の延期が決まり、4月の日本選手権も実施されなかった。これまでの日常であった練習も制限され、プールと距離をとらざるを得ない日々を迎えた。
その後、徐々に日常が戻っていき、今秋には約2年ぶりの海外でのレースとなる「国際リーグ」に参加。「すごく楽しかった」、そう感じた。