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エディー・ジョーンズ「そんな事になる気が」ラグビーW杯で日本と“再会” 名将は何を考えている?
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2020/12/18 17:01
2023年ラグビーW杯フランス大会で日本と同じプールDに入ることが決まったイングランド代表。指揮官エディー・ジョーンズはどんな策を打ってくるか?
「プレッシャーの力」を使った心理戦も見所
組み合わせが決まったことで、ここから徐々に注目度が高まっていく23年フランス大会。W杯の楽しみとして、各陣営の心理戦の話にも少し触れたい。世界中のラグビーファンの注目を集める大会では、試合前週の記者会見での発言が度々大きな話題を呼ぶことがある。ジョーンズHCはこの心理戦が実にうまい。
記憶に新しいのは19年大会準決勝だ。オールブラックスと対戦することになったジョーンズHCは、記者会見に集まったメディアに向かって「この中で準決勝でオールブラックスが負けると思っている人は手をあげて下さい」と尋ねた。手を挙げた人はごくわずかで、これを見たジョーンズHCは「その通り。オールブラックスがこんな大事な試合で負ける訳がありません」と試合前に相手を徹底的にホメ殺し。面白いネタを提供されたメディアは、ニュージーランドのスティーブ・ハンセンHCはこの発言に対するコメントを迫り、ジョーンズHCが意図した形でこの対戦をあおる記事を書き立てた。
また、キックオフ直前のオールブラックスの儀式「ハカ」に対しては、不適に笑うオーウェン・ファレル主将を中心としたV字の陣形で対峙し、横浜国際競技場に異様な興奮を生み出した。
こうした動きが試合の結果にどれだけ影響したかは誰にも分からないが、オールブラックスの選手たちは、名将が作り出したシナリオで大騒ぎするメディアと観客に包まれ、この試合を戦うことになった。
「心理戦も勝負の一部」と堂々と言ってのける百戦錬磨のジョーンズHCは、23年のフランスでもさまざまな手で試合前から相手にプレッシャーをかけてくるだろう。かつての教え子である日本代表を相手にどのようなプレッシャーをかけてくるのだろうか。
まだ誰にもわからない3年後
20の大会出場国のうち、残す出場枠は「8」。日本をはじめとしたすでに出場を決めている上位12カ国も、3年後に登り詰める山の頂点を見ながら、必死で目の前の強化課題に取り組んでいるというのが正直な事情だろう。
20カ国の代表チームには20通りの情熱と事情、背景がある。それぞれの国が大勝負でどんな「お家芸」を見せるのか。3年後の大会でどのような戦いが繰り広げられるかは、まだ誰にも分からない。だが、世界中のラグビーファンたちを大きな興奮に包む、熱いドラマが待っていることだけは間違いない。