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藤井聡太の天才性を名棋士はどう評したか 「現状で勝つプランがない」「まるでモーツァルト」<2020名言>
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byJapan Shogi Association
posted2020/12/29 17:02
藤井聡太が史上最年少タイトル獲得を達成した棋聖戦第4局。ここから天才の快進撃が始まった(代表撮影)
<名言2>
藤井聡太という才能によって板谷一門も照らされました。
(杉本昌隆/Number1010号 2020年9月3日発売)
◇解説◇
藤井聡太二冠を語るにあたって忘れてはいけないのは、師匠の杉本八段、そして東海地方で脈々と続いてきた板谷四郎一門の存在だ。
板谷四郎九段はプロ棋士として超一流の証である順位戦A級にたどり着き、のちの永世名人となる大山康晴との九段戦に臨んだ経験もある。しかしタイトルは奪えず1959年に引退。その直後、名古屋の一等地に「板谷将棋教室」を構えた。次男の板谷進を弟子とし、その進の弟子が杉本八段だったのだ。
その杉本八段の弟子である藤井聡太が、半世紀の時を超えて史上最年少で二冠達成ならびに八段昇段を果たす。「原点は将棋が強くなること」を大事にした一門から、天才棋士は生まれた。この2人の師弟関係について、王座獲得経験のある中村太地七段はこのように評する。
「杉本先生は日ごろから本当に弟子である藤井二冠に敬意を持って接しています。それこそ、杉本先生が師匠なのに藤井二冠に敬語を使うんじゃないか、というほどでして(笑)。冗談はともかく、藤井二冠の方も杉本先生にずっとお世話になってきたからこそ、師匠に対する信頼感があふれている。現代的な、そして凄く理想的な関係の師弟なのかなと」
なお、ここにきて杉本八段の棋力も冴え渡っている。第70回NHK杯テレビ将棋トーナメントでは現役最強棋士の1人である豊島将之竜王相手に95手で勝利するなど、師匠もまた確実に成長を遂げているのだ。