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藤井聡太の天才性を名棋士はどう評したか 「現状で勝つプランがない」「まるでモーツァルト」<2020名言>
posted2020/12/29 17:02
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Japan Shogi Association
雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回は2020年、将棋界を盛り上げた藤井聡太二冠をめぐる、4人の棋士の言葉です。
<名言1>
最近の藤井さんの将棋を見て、思い浮かべるのはモーツァルトです。
(佐藤天彦/Number1010号 2020年9月3日発売)
◇解説◇
佐藤九段は将棋界で今起きている事象について、オリジナリティーある表現で言語化する達人である。代表的な例は、“将棋ソフトが示す最善手がある一方で、人間の観点でいかに将棋を研究していくのかの葛藤”について「評価値ディストピア」と評したことは将棋ファンの中で話題になった。
その表現力は、藤井聡太二冠を語る際にも存分に発揮されている。
同年代である中村太地七段との「縁側対談」において、天彦九段は15歳時の藤井四段(当時)と初対局した際の印象について「その時点ではもうモノが違うのかなという予感がしていました」と回想するとともに、最近の藤井将棋についてクラシック音楽の大家・モーツァルトに重ねたのだ。
「(モーツァルトは)5歳で最初の作曲をして、14歳の時のは門外不出の教会のミサの合唱曲を一度聞いただけで覚えて書き起こしたという逸話があります。彼の音楽はいつの間にか自然と心の奥に深く入ってくるような旋律ですけど、藤井さんの将棋にもそういう自然さを感じます」
将棋は勝負の世界であるとともに、棋士には美しい棋譜・盤面を残すという“芸術家”的な側面も求められるという。それを実感している天彦九段だからこそ、10歳以上年下である藤井二冠への敬意を隠さないのである。