酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
【井納翔一は?】数字で検証・巨人FA移籍で成功した投手はいるか? 人的補償で一岡&平良を手放した痛み
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKoji Asakura/Hideki Sugiyama
posted2020/12/14 17:16
巨人へのFA移籍選手で最も勝利を挙げているのは工藤公康(左)だ。果たして井納翔一はどうなる?
若手を競争させて救援陣の整備をしては
それよりも重要なことは救援投手の整備だ。1イニングだけなら素晴らしいパフォーマンスをする救援に特化した投手を作っていく。育成も含めた若手投手陣、そして他球団の出世前の投手。FA移籍選手よりもはるかに安くて伸びしろもある投手である。
こうした投手を競争させて「勝利の方程式」を形成していくべきではないかと考える。今の巨人は“先発失格”となった投手を救援に回すケースがあるが、救援専門投手をさらに整備すべき時だと思う。
この間に、リーグ優勝できなかったり、パ・リーグのチームに後れを取るかもしれないが、絶対的エース菅野智之の移籍を奇貨として新たな形を構築していくべきではないか。
阪神に比べて成功率が低い? 西は今やエース
なおこれは投打ともに言えることだが、巨人は阪神に比べてもFA選手の成功率が低い。
2015年以降、阪神は高橋聡文、糸井嘉男、西勇輝の3人の選手をFAで獲得したが、西は今や虎のエースである。糸井は4シーズンで3割2回、高橋も2年間セットアッパーとして大活躍した。大枚をはたいたからには大事に使って元を取ろうという認識が強いのではないかと思える。
阪神は2年おきくらいにしかFA選手を取らないし、前のFA選手とポジションが被る選手は原則として取らない。
巨人の場合、ポジションが被る選手を獲る
しかし巨人は、毎年のようにポジションが被る選手を取る。獲得が決定的とされる梶谷は外野手だが、外野には丸佳浩、陽岱鋼とFA移籍選手が2人もいるのだ。陽が「人的補償」になるとの報道も出ているが、筆者など「もったいない」と思ってしまう。
失礼な言い方だとは承知の上だが――巨人のFA戦略は「雑」の一語だと思う。新型コロナ禍でプロ野球も大きな経済的ダメージを受けている。それを勘案しても、こうしたFA戦略は見直すべき時が来ているのではないか。
(打者編に続く。関連記事からもご覧になれます)
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