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ポイントは肩甲骨?「水泳」でアンチエイジングできる 中高年が、いま泳ぐべき3つの理由
text by
鳥集徹Toru Toridamari
photograph byGetty Images
posted2020/12/12 11:00
中村格子医師に「水泳」のアンチエイジング効果について聞いた
鎖骨にぶらさがっている肩が落ちてしまうと…
──高齢者は転倒・骨折を防ぐために「サルコペニア(筋肉減少症)」の予防が大切だと言われています。全身の中でも足腰の筋肉の量は大きく、そのせいかサルコペニアというと、どうしても太ももの筋肉の衰えが注目されます。あまり上半身のことは言われないなと思いながら、今、お話を聞いていたのですが、あらためて上半身の大切さについて、お話しいただけますか?
姿勢を保つには肩甲帯の筋力がすごく大事なんです。肩は鎖骨の筋肉だけで釣っているようなもので、ちょうど、昔の人が物を運ぶのに使っていた天秤棒のように、鎖骨にぶらさがっている感じなんです。その肩を引き上げるのに、背中の「広背筋」、腕周りの「大胸筋」、「大円筋」「小円筋」「前鋸筋」といった、たくさんの筋肉が働いています。それらの筋力が衰えると、「ドロップショルダー」と言って、肩がストンと落ちてきてしまう。すると、姿勢自体を保つことが難しくなります。
姿勢が悪くなると、立位のバランスも悪くなるので転倒しやすくなり、様々な筋肉や関節に負担がかかって、いろんな痛みが出ることがあります。それに、横隔膜がきちんと使えなくなりますから呼吸が不十分になったり、横隔膜が圧迫されて逆流性食道炎になったりもします。ですから、肩甲骨周りや胸、背中の筋肉をつけておくことはとても大切なんです。
上半身の力の差で車椅子や介護が不要になるかも
──どうしても私たちは、転倒・骨折の防止というと下半身の強化ばかり考えるんですが、上半身も大事なんですね。
転倒・骨折の予防以外にも、上半身の筋肉はとっても大切ですよ。たとえば、高齢者が脚を骨折した場合、肩や腕の力が落ちていると、松葉づえが使えなくて、車椅子になります。それから、人工関節の手術をした直後なんかでは、ベッドで座った姿勢から車いすに移らなくてはいけませんが、肩とか腕の力が落ちていると介護が必要となります。年を取るほど腕の力って、すごく大事なんです。ですから、上半身の筋肉にも、もうちょっと目を向けてもらえたらなと思います。