食事制限のダイエットには大きなリスクが

──水泳は生活習慣病の予防や改善にも効果的ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

　もちろんです。高血圧、脂質異常症、糖尿病、痛風といった病気は、変形性膝関節症のように太り過ぎで起こる整形外科の疾患とセットで起こることがありますが、5kgくらい体重を落とせば、一緒に血圧やコレステロール値、血糖値も下がります。

　ただし、体重は食事制限だけでなく、運動も一緒にやって落としてほしいんです。なぜなら食事だけでダイエットすると、足りないエネルギーを補うのに筋肉のたんぱく質も使ってしまうから。本当だったら脂肪だけ落としたいのですが、運動をしないで食事制限で3kg減ったとしても、そのうちの1.5～2kgが筋肉だったりするんです。リバウンドするときは脂肪で太っていくので、5：5から6：4くらいで筋肉が減ってしまう。ですから、なるべく筋肉を減らさず脂肪だけを減らすためにも、運動を一緒にしてください。

──しかし、炭水化物だけを抜く「糖質制限」や、週に1、2回食事を抜く「プチ断食」といったカロリー制限系のダイエットは忙しくてもやりやすいですが、現役世代だとなかなか運動する時間がとれませんよね。

　その点、水泳はいいですよ。運動強度が高いですから、15～30分水泳しただけでも、30分～1時間走ったのと同じくらいの効果が得られます。忙しければ、週に1、2回だけでもいいので、ちょこっとプールに寄って、さっと泳いで帰る時間を作っていただければと思います。

在宅勤務で悪化した腰痛にも、浮力の除圧が効く

──とくにこんな人に泳いでほしいというのはありますか？

　ひざや股関節が悪くて陸上で運動ができない人はファーストチョイスです。あとは、姿勢が悪くなってきている方、ヨットでいうとマストが立てられなくなっているような感じの方ですね。広背筋が弱くなって、持久力がなくなって、猫背っぽくなっている人。デスクワークばかりしていると、広背筋も落ちてしまいます。

　実は、リモートワークでデスクワークの時間が延びたために、腰痛が悪化する人が増えているんです。自宅でパソコン作業をしようと思っても、テレビやソファーの前にあるローテーブルや、ダイニングテーブルしかないという方が結構います。オフィスにある机はわりと生体工学に基づいて設計されているので、きちんと調整できていなくてもすごく合っていないということはないんですが、ダイニングテーブルがあったとしても、テーブルの高さと椅子の高さがパソコン作業用に調整されてはいないので、どうしても無理な姿勢になってしまうんです。

　それで腰痛が悪化した方にも、水泳はとてもおすすめです。腰痛の改善には脊椎にかかっている負担を減らすことが重要なのですが、泳いでいると浮力がかかるので、自動的に脊椎が除圧されるんです。それに、姿勢が悪いと浮かずに沈んでしまうので、自然と脊椎が伸びます。脊柱管狭窄症はそり過ぎに、椎間板ヘルニアは曲げすぎに注意しなくちゃいけませんが、脊椎を除圧して、伸ばしながら、腰回りの筋トレにもなる。腰痛対策にも理想的と言えます。

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