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アーモンドアイ・国枝師が語る ジャパンカップのレース中に「あぁ、やっぱり勝てたなぁ」と思ったワケ
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/12/06 11:03
国枝調教師は、「3強」が揃ったジャパンカップでも名馬アーモンドアイの勝利を信じていた
ルメールには一言、「お願いします」とだけ
だから担当の根岸真彦調教厩務員や手綱を取るクリストフ・ルメール騎手に対しても、何も特別な事を言わなかったと言う。
「根岸は沈着冷静なスタッフですからね。よほどの事がない限り、何も言う必要はありません。クリストフには跨る時に『お願いします』と伝えたくらい。一流ジョッキーですから。こちらが余計な事を言うより彼に任せていた方が良いでしょう」
ルメール騎手を乗せた後はパドックを周回させず、すぐに本馬場へ向かった。これもいつもの手順だった。
「ラストランだからといって特別なことは何もしませんでした。全ていつも通りにやりました」
「あんなに良いスタートを切るとは」
一瞬、不安の叢雲が広がりそうになったのは馬場へ入った瞬間。アーモンドアイが尻っ跳ねをしたのだ。
「『おやっ?!』と思ったけど、すぐに返し馬に移るとスムーズに走っていました。その様子を見て、まずはひと安心しました」
しかし、その後またも「嫌な感じ」という事態に見舞われた。真っ先にゲートに誘導されたフランスからの遠征馬ウェイトゥパリスが枠入りをゴネた。入れようとする競馬場スタッフと拒むフランス馬の根競べは実に5分に及んだ。その時の胸の内を国枝調教師は次のように述懐する。
「やっぱり何となくイヤ~な感じはしました。ただ、幸いだったのはゲートの中に入った後に待たされたのではなかった事。お陰で終始落ち着いていたから『よし、よし』『その調子』という気持ちで見ていました」
やがてウェイトゥパリスがゲートインすると、他の各馬の誘導が始まり、アーモンドアイもゲートに収まった。
「中に入った後も落ち着いていました。安田記念(2着)の時はガタガタうるさくて出遅れたけど、この感じなら普通のスタートを切れると思いました」
そんな国枝調教師の読みはある意味当たったが、ある意味では外れた。前扉が開いた途端、アーモンドアイは15頭の出走馬の中でも最も速いのでは? と思えるダッシュを決めた。逃げる気になればいくらでもハナを奪える勢いだったのだ。
「“普通に”出るとは思ったけど、あんなに良いスタートを切るとは思いませんでした。あそこまで好発を決められるとカレンブーケドールの津村(明秀)君も控えざるをえないという感じでした」