「あぁ、やっぱり勝てたなぁ……」

　しかし、ルメール騎手に先導する気は毛頭なかった。無理する事無く自然に抑えると、キセキやヨシオらが前へ行き、アーモンドアイは好位4～5番手で流れに乗る形になった。その様を見て、国枝調教師はホッとしたと言う。

「正直、そういう態勢が出来たところで『良い形になった』と思いました。ペースが遅ければ、馬群が詰まって渋滞に巻き込まれてしまう可能性がある。でも、流れて縦長になった事でその心配がなくなったし、折り合いもつきました。正直、これで大体“行ける”と感じました」

　“行ける”というのは“勝てる”という意味か？　と問うと即座に「はい」という答えが返って来た。

　直線を向いてからのアーモンドアイについては次のように見えたと続ける。

「天皇賞の時よりも弾みがあると思いました。前を捉えに行く時の勢いがあった。『あぁ、やっぱり勝てたなぁ……』と思って見ていました」

(C)Keiji Ishikawa

コントレイルとデアリングタクトはさすがだった

　抜け出した女王の少し後ろで、コントレイルとデアリングタクトが2、3着まで上がって来た。しかし、時すでに遅し。若き3冠馬2頭が追い上げて来たのはアーモンドアイが完勝と言って良い走りを披露した後の事だった。

「それでもコントレイルとデアリングタクトは『さすがだなぁ』と思いました。うちのカレンブーケドールだって強い馬だし、良い競馬をしてくれたけど、それをかわしてしっかり2、3着に来るのだから『やはり走る馬だ』と感じました」

　レース直後、ライバル達の指揮官、すなわちコントレイルの矢作芳人調教師、デアリングタクトの杉山晴紀調教師と言葉をかわしたかを聞くと次のように答えた。

「杉山君とはほとんど同じ場所で見ていて、すぐに『おめでとうございます』と言ってもらいました。秋華賞（デアリングタクトが1着で、国枝師のマジックキャッスルが2着）では私の方が『おめでとう』と声をかけ、加えて『ジャパンCで待っているよ』と言ったのですが、今回はそんな軽口を叩く余裕はありませんでした。私自身、興奮していましたから。だから矢作先生とも『おめでとう』『ありがとう』くらいの会話だったと記憶しています」

　根岸調教厩務員とは「良かった、良かった」と言葉をかわした国枝調教師。ウイニングランを終えて上がってきたルメール騎手は「凄い」「凄い」と繰り返していたと言う。

(C)Keiji Ishikawa

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