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“現実版キャプテン翼クラブ”南葛SC、ロベルト本郷の教えで“J6”昇格 高橋陽一先生「マンガ以上にドキドキ」
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKenzaburo Matsuoka
posted2020/12/06 06:00
昇格が決まり大喜びする南葛SCと高橋陽一先生
だがこのまま0-0でハーフタイムかと思えた前半のラストプレー。河本明人からのパスを受けた佐々木が、見事な切り返しからのシュートで先制点を決める。厳しいマークにあいながらも試合を動かす仕事をしたのは、チームを牽引してきたストライカーとしての意地でもあった。
「チームの攻撃は自分が引っ張ってきた自負はあります。若い選手が多いし、彼らに気負わせたくないので、自分がやらないといけないと思ってました」
後半には村越健太のクロスを途中出場の宮澤弘が頭で決めて待望の追加点。53分に2-0となり、その後も南葛がゲームをコントロールして試合を進めた。その後には、河本に無人のゴールに流し込む絶好のお膳立てが巡ってきたが、これがゴールバーをかすめて外れてしまう。あと1点を奪えば試合を終わらせることができただけに、河本は頭を抱え、思わずその場にしゃがみ込んでいた。
終盤、立て続けの失点でまさかの同点
一方で、九死に一生を得たのはTIUだ。
ここから捨て身とも言えるパワープレーを仕掛け始めた。青木を中心とする南葛守備陣はそれらを丹念に跳ね返していたが、セカンドボールを拾われる我慢の展開となる。そして85分、徹底され続けたロングスローで生まれた混戦から失点。これで息を吹き返したTIUに怒涛の猛攻を畳み掛けられ、終了間際にはロングスローから左サイドを崩され、土壇場で追いつかれてしまう。起死回生の同点弾に、TIUの選手たちは歓喜の輪を作っている。
タイムアップ目前で勝利がこぼれ落ちる悪夢に、南葛イレブンはがっくりと肩を落とした。サッカーの怖さを思い知らされた瞬間に、試合を見守っていた高橋陽一氏や岩本義弘GM、ベンチ外だったメンバーもみな言葉を失い、重苦しい空気が流れていた。
ただ、延長戦がある。
気落ちする選手たちに、島岡監督はこう言ってピッチに送り出したという。
「あと20分、このメンバーでサッカーができるじゃないか」