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大物たちの戦力外通告→トライアウト 元セーブ王「今の僕にはこれしか無かった」元首位打者は…
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKoji Asakura/Hideki Sugiyama
posted2020/12/06 17:03
今岡誠(左)や小林雅英ら、かつてタイトルを勝ち得た名選手でもトライアウトを経験した選手は多い
<名言2>
「思ったより緊張しました。マジで、久しぶりに」
(今岡誠/NumberWeb 2009年11月16日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/13614
◇解説◇
2000年代前半の阪神の中軸打者として、絶対的な信頼を得たのが今岡だった。
星野仙一監督の下で優勝した2003年には超攻撃的1番打者として、打率.340をマークして首位打者に輝いた。その2年後には岡田彰布監督にクラッチヒッターとしての能力を見出されると、NPB史上3位となる147打点をマークして打点王を獲得、セ・リーグ制覇に導いた。
しかしその翌年から成績が急下降し、2009年限りで阪神を戦力外に。現役続行を希望していた今岡は12球団合同トライアウトを参加することにしたのだ。
当時、まだトライアウトは現在ほど注目を集めていなかった。また会場となった甲子園球場は当日に雨が降ったこともあり、室内練習場で行われるなどプレー環境も整っていなかった。
練習場にはブルペン以外にマウンドが設けられておらず、ブルーシートに土が盛られ、自分たちが足で作る。打席も土ではないため、人工芝のマットを敷くなど、自分たちの運命を左右する舞台としては悲しすぎる佇まいだったという。結果が出なければ、ここが最後の打席になるかもしれない――。そう思ったとすれば、今岡が「マジで緊張した」というのも無理はないだろう。
絶頂期のような打撃とはいかなかったものの「バッティングに関してはね、自分でどうこうと言うんじゃなくて、見た方が判断することですから。やることはやったんでね、今日の結果で評価をしてもらいます」と今岡は当時語り、吉報を待った。その今岡に救いの手を差し伸べたのは、千葉ロッテだった。
今岡は翌年の春季キャンプにテスト生で参加し、合格を手にする。シーズン通じては決して活躍したとは言い切れなかったものの、CSファイナルステージ、ソフトバンク戦では本塁打を放つなど“下克上”に貢献したのだった。