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ラツィオに大黒柱インモービレの“コロナ隠蔽”疑惑で捜査が…最悪、リーグ追放も
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/11/29 17:00
“コロナ隠蔽疑惑”が出ており、ラツィオとインモービレは周囲の雑音とも戦わなければならない
ユーベ戦を翌日に控えたチームが前泊するフォルメッロ練習場内のクラブオフィスへ、アベリーノ地方検察庁と財務警察が捜索に入り、検査記録などの証拠品を押収したのだ。検察チームは『フトゥーラ』社にも捜索に入り、ここでも1000体以上の過去半年分の検体サンプル記録など、大量の証拠品を押収、専門家の鑑定に持ち込んでいる。
検察庁がラツィオにかける容疑は「保健所への陽性患者通報義務違反」をはじめ「陽性選手の集団行動(練習、長距離移動、試合)回避義務違反」「過失による感染拡大」、さらに「公衆衛生に反する詐欺容疑」など多岐にわたる。
『フトゥーラ』社のタッコーネ代表も刑事罰容疑で取り調べを受けている状況だが、同社とラツィオとの間では、すでに責任のなすり合いが始まっている。
選手を感染の危険に晒されたトリノは激怒しており、検察庁に事件の全容解明と報告を望む請願書を提出済み。ブルージュ戦の前にラツィオと対戦したボローニャも同様の動きを見せている。どのクラブにとっても、今回のスキャンダルは他人事ではない。
リーグ機構では検察の捜索に先がける形で緊急役員会が開かれて、伊スポーツ医師会の全面協力の下、単一機関による厳格な検査体制の一元化が推進されることになった。
検査続きのインモービレだがピッチでは
このひと月の間、インモービレが鼻腔の奥や咽喉に検査キットを突っ込まれた回数は20回近くにのぼる。そんな紆余曲折を経て、彼はグラウンドへ還ってきた。
11月21日、セリエAの第8節。クロトーネとのアウェーゲームに先発すると、21分に珍しいダイビングヘッドで先制弾。後半にはFWホアキン・コレアの追加点アシストも決め、チームの牽引役として力強く復帰をアピールした。
「こんなゴタゴタを経験すれば、サッカーできることがどれだけ大事か身にしみてわかる。もちろん、以前よりやる気がわいてきた」
続く24日のCLゼニト戦では、開始3分に豪快な20mミドルを叩き込み、55分にもPKによるダメ押し弾で3-1の完勝に貢献。チームは決勝トーナメント進出へぐっと近づいた。
ただし同じ日、イタリア国内ではコロナウイルス新型肺炎によって853人が亡くなったことを付記しておきたい。前日の23日には630人が命を落としている。伊スポーツ医師会のマウリツィオ・カサスコ会長は警鐘を鳴らす。
「リーグ戦を開催するためのサッカー界のプロトコルには甘い点があった。我々はパンデミックの世界に生きていることをより自覚するべきです」
ただ今回の事件には、個人的に引っかかることが残っている。