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「サンキュー、幕張!」ロッテ戦力外通告、細谷圭が人知れず苦しんだ“1年目の夏”とは

posted2020/11/27 17:04

 
「サンキュー、幕張!」ロッテ戦力外通告、細谷圭が人知れず苦しんだ“1年目の夏”とは<Number Web> photograph by KYODO

11月4日、千葉ロッテから戦力外通告を受けた細谷圭選手

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永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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 今年3月、ロッテ浦和球場。

 雨がいつ雪に変わってもおかしくない底冷えがするグラウンドで、細谷圭は怪我をも恐れぬ積極的な走塁で、誰よりも存在感を示していた。

 近年は若手の台頭もあり、シーズンの大半をファームで過ごすことが多くなった細谷。それでも腐らずに、前向きな姿勢で、若手の手本となるように全力プレーを心がけていた。

「俺も長い年数をやっていて、下(二軍)で頑張っている若い子達に見せなきゃいけないことが沢山あるからね」

 彼にしてみれば当然のことを普段通りに見せただけだった。前述の走塁についても、その重要性を語る。

「そういうこともきっちりやっておかないと、結局、差が出ちゃうんだよね。たとえば偽走もキャンプの最初の方であれだけ(井口資仁)監督から言われていたはずなのに、ファームではやらない選手もいる。あとはシートノックやボール回しのボールも弱い。それじゃ上に行ったって絶対に(レギュラーを)取れないよね」

 彼のひとつひとつのプレーに、若手選手への無言のメッセージを感じた。

 群馬県の太田市立商からプロ入りして15年目の32歳。愚直なまでに誠実な男は、あとどれくらい続くか分からない現役生活に、未練だけは残さないよう、目の前のことに全力で取り組もうとしていた。

 そんな細谷が今年11月、千葉ロッテから戦力外通告を受けた。安田尚憲、藤原恭大、和田康士朗といった若手が台頭し、世代交代が進むチームの波に飲まれてしまった格好だ。

「2017年に活躍できていれば」

 細谷は以前、こんなことを話していた。

「30歳を超えると焦りは出てくるよね。2016年の後の2017年のシーズンに活躍できていれば、ポジションというか、自分の立ち位置を確立できたとは思うけど……」

 プロ11年目を迎えた2016年。細谷は116試合に出場し、自身初の年間100安打超えを達成した。惜しくも規定打席到達こそならなかったが、400打席を超えて、打率も2割7分5厘をマーク。プロの選手として恥ずかしくない実績も残せた。 

 しかし、一軍定着が期待された矢先の2017年、細谷は首にヘルニアを発症する。

 その影響で2017年は一軍で41試合、2018年は21試合と出場機会が減少し、主戦場は再びロッテ浦和球場に戻った。

【次ページ】 18歳の細谷がオフを利用して向かったのは……

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