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「サンキュー、幕張!」ロッテ戦力外通告、細谷圭が人知れず苦しんだ“1年目の夏”とは 

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永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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posted2020/11/27 17:04

「サンキュー、幕張!」ロッテ戦力外通告、細谷圭が人知れず苦しんだ“1年目の夏”とは<Number Web> photograph by KYODO

11月4日、千葉ロッテから戦力外通告を受けた細谷圭選手

代走で起用されることに活路を見出そうとしていた

 今年10月、チーム内での新型コロナウイルスの感染発覚で選手22人の大量入替があった。細谷は、このタイミングで今季初の一軍昇格を果たしたが、出場は代走で起用された1試合のみ。結局これがロッテ一軍での最後の出場となった。

「愚痴を言うと絶対に良いことなんてないからね。たぶん陰口も全部、自分に返ってくる。そうじゃない人もいるだろうけど、俺はそう思っている」

 そう語っていたが、内心は消化し切れない想いもあっただろう。それでもベンチではいつもの細谷圭であり続け、ときには後輩を鼓舞し、今、出来る精一杯を表現しようと心がけた。

 近年、代走で起用されることが多くなったことについて、細谷は次のように語っていた。

「ランナーで出ると楽しくてしょうがない。ベンチから相手投手を見てて分かることもあるし、塁に出て分かることもある。今日だって相手投手を見てて、昨年までのフォームと牽制の差がなかったから分かりやすかった」

 高校時代には「上州のゴジラ」という異名があったように、本来のアピールポイントはバッティングのはずだ。本音はもっと打席にも立って、打って存在感を示したかったはずなのに、彼は代走で起用されることに活路を見出そうとしていた。

「相手投手の配球も2球目は何が来たから次は何が来るとかね。そういうのが手に取るように分かるから。だからランナーは面白い。当然、バッティングにも活きてくる。たとえばクイックで、このピッチャーはどこから動いて来るのか分かれば、差し込まれたりしない。相手の配球パターンも読みやすくなることもあるよ」

 1つの事象を1つだけに終わらせず、2つにも3つにもして自身の肥やしに変えて行く。自身の背中を通して、若手に伝えたかったのは、おそらくそういうことだ。

最後はお立ち台の“あの決め台詞”を

 今オフの千葉ロッテは細谷の他にも、内竜也、大谷智久、細川亨といった経験も、実績もあるベテラン選手達が次々とチームを去ることが決まっている。

 内、大谷は現役続行を希望、細川は現役を引退したが、11月25日現在、細谷は進路について何も公表していない。

 他球団で現役を続けるのか、野球とは違う別のステージへ向かうのか、現段階では決め兼ねている様子だ。

 ただ、気持ちさえ固まれば彼は必ずファンの前に出て、こう言うはず。

「サンキュー、幕張!」

 万感の想いを込めて、かつてお立ち台の決め台詞だったその言葉を公の場で叫ぶ。

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