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巨人、「球際が弱い」「状況判断ができない」…第4戦で「最後の一歩」をしっかり踏み出せるか
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2020/11/25 12:05
悪送球をして茫然とする巨人・吉川尚。手前は二塁に向かおうとするソフトバンク・周東
やるべき状況判断をできなかったミス
相手は周東だ。打球のコースと自分が捕球した場所と体勢、周東の足をきちっと状況判断ができていれば、決っして強引にボールを投げる場面ではなかったはずである。
もちろん相手は周東だからこそ一塁で止めておいても結果は二塁に走られているかもしれない。盗塁を警戒して余計なプレッシャーを受けた上で、同じ状況になったのかもしれない。
また中村に打たれたのは本塁打。走者が一塁でも二塁でも同じだったという考えもあるかもしれない。
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ただ、そういうことではない。
短期決戦とは、まずやるべきことをきちっとできるかどうかの積み重ねで、そこが勝負の分かれ目になる。ボールを捕るところまでは満点。しかしそこで正しい状況判断ができなかった。
防ごうと思えば防げたミス、やるべき状況判断をできなかったミス。結果的にはそのミスから綻びが生まれ、巨人は3試合連続で先制点を奪われたということである。
川上哲治の造語「球際」
V9巨人を率いた川上哲治元監督の言葉に「球際(たまぎわ)」という造語がある。
勝負が決まる最後の、その最後の瞬間に、どれだけあと一歩、前に出られるか。それが川上さんの語る「球際の強さ」である。
それは単純に守備だけの話ではない。
スイングでも、どれだけ最後にあと1つボールを押し込めるか。投手のピッチングでも、最後のリリースでどれだけ指先に力をこめて意志の入ったボールを投げ切れるか。そして1つ1つのプレーでどれだけきちっと判断をして、最後まで完全なプレーができるか……。