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イタリアの“消えた天才”は今、何を? タバコ1日20本の酔いどれゴーラー、下ネタ連発テクニシャン…
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/11/24 17:02
ウブネル(左)とディアマンティ。濃すぎるパーソナリティのフットボーラーには心惹かれてしまう
11-12年当時のボローニャには主将のベテランFWディバイオを除けばロクな戦力がなかったはずなのに、シーズン9位という望外の好成績を収められたのは、入団1年目にして7ゴール6アシストを記録したディアマンティの功績が大だった。
夏のオフには、ユベントスやミラノ2強への移籍話がまことしやかに囁かれたが、結局実を結ぶことはなかった。
「サッカーの世界で商売の折り合いがつかないことはよくあることさ。物事ってのはなるようにしかならない。それでいいんだよ」
達観し、飄々としたディアマンティは、鶏口となるも牛後となるなかれ、とも言っていた。
中国でリッピに「殺されかけた」?
台北出身のTVリポーターを妻に娶り、つねに水平線と国境の向こうを見ていた変わり種の天才は、14年冬に中国へ渡った。
広州恒大でリーグ優勝を経験できたのはいいが、チームを率いていた名将リッピに「あやうく殺されかけた」という。
「右足でゴールを決めた試合で、いつも『利き足以外は大したことないな』とからかってくれたチームメイトたちに"どうだ見たか!"って中指立てたのさ。全員笑ってたし、もちろん仲間内のジョークに決まってる。ところが、頭の固いリーグ側から4試合出場停止と5万ユーロ分の罰金をくらった。あんときは『何て馬鹿なことをしでかしたんだ!』と、リッピからマジで殺されるかと思ったよ」
オーストラリアでいきなりリーグMVP
中国移籍とともに、イタリア代表からの招集はピタリ途絶えたが、後悔はしていない。
昨年の夏から、ディアマンティは南半球でボールを蹴っている。
豪州Aリーグのウェスタン・ユナイテッド(メルボルン)というクラブの主将を任され、「正直テクニックはないがフィジカル・モンスターばかり」の中でプレーオフに導くと、1年目にしてリーグMVPに選ばれた。
母国から1万5000キロ離れているが、望郷の念はない。