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イタリアの“消えた天才”は今、何を? タバコ1日20本の酔いどれゴーラー、下ネタ連発テクニシャン…
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/11/24 17:02
ウブネル(左)とディアマンティ。濃すぎるパーソナリティのフットボーラーには心惹かれてしまう
年間2桁ゴールは堅かったはずなのに、当時のセリエAは若くて上質のストライカーが豊作で呑んだくれのベテランFWはさぞ扱いにくかろうと思われたのか、本人が故郷の田舎から離れたがらなかったためか、真相はわからない。
得点王を獲ったウブネルは、04年に降格したペルージャとともにセリエAへ別れを告げた後もプレーを続け、3部、5部とカテゴリーのレベルを落としながら、2011年までゴールを狙い続けた。
引退の43歳時、7部でガソリン代は自腹
43歳でついにスパイクを脱いだときにプレーしていたのは7部アマリーグで、遠征のガソリン代は自腹だった。
3年前に五十路を迎えたウブネルの地元紙インタビューを読んだことがある。
底辺カテゴリーでのキャリア晩年も、30歳で遅咲きデビューしたセリエAでの思い出も等しく豪快に語る彼は、ドスドスと荒々しく水牛のようにゴールに迫った現役時代と変わらず偉丈夫そのもので、自然に囲まれた山村での現在の暮らしを謳歌している様子が伝わってきた。指導者の道も少し齧ったけれど性に合わなかったらしい。
かつての酔いどれ天才ゴーラーは「ブレシアやピアチェンツァをセリエAに残留させたことが俺の勲章。スクデットなど俺には意味がない」とまで豪語していた。
日韓W杯、バッジョの代表入りが話題になる中で
しかし、彼のサッカー人生には、1つだけ心残りがあるのだ。
日韓W杯を控えた02年の初夏、代表監督トラパットーニ(当時)が国民的英雄ロベルト・バッジョを代表入りさせるか否か、イタリア世論は紛糾していた。さんざん話題をさらったバッジョ招集落選の陰で、リーグ得点王ウブネルが代表入りする可能性を口にする者は誰一人いなかった。