情熱のセカンドキャリアBACK NUMBER
元ラグビー日本代表・齊藤祐也は今、何を? アパレル業→LEDランプ事業を経て、豊島区で…
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/11/17 17:01
明治大学、サントリー、神戸製鋼で優勝を経験し、日本代表でも活躍した齊藤祐也
「運動能力を伸ばすだけがスポーツじゃない」
最初は「需要がなかった」。ボールパークコースを打ち出しても反響はなく、少人数の時期が一定期間続いた。それでも齊藤は失望ではなく、希望を感じ取っていた。
自分の手でトップアスリートを育ててみたい。その目的が、自然と変わっていった。
「子供たちのヤル気を引き出すことがスポーツなんだなって気づかされたんです。子供たちだって運動能力を伸ばすことだけが喜びじゃないって感じてくれました。
失敗しても誰かが助けてくれる。誰かが失敗したら今度は自分が助けてあげる。感謝の気持ちや仲間意識が芽生えて、チームワーク、リーダーシップ、コミュニケーションの力を磨いてくれる。
運動能力を伸ばすだけがスポーツじゃないということを強く感じました。継続、連続していくことで身につけていってもらおう、と」
「うちの子が笑うようになったんです」
あるとき生徒の母親から涙ながらに感謝されたことがあった。
「うちの子が笑うようになったんです」
自分に自信を持てなかった子が、スポーツ教室に通うようになって自信を持つことができて明るくなった、と。方向性が間違っていないと確信を持つことができた瞬間でもあった。
会員数が伸びていかない状況にも、齊藤の背中を押した「施設の人」は「辞めないで続けてほしい」と言ってくれた。それが数年続いていく。
齊藤はそう言われるたびにこう返した。
「たとえ子供が1人になっても僕はやります」と。
子供たちと触れあえるこのスポーツ教室が、自分の喜びと成長につながっていると感じたからだった。