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「阪神スカウトから非常識なカネが…」 あの『ドラフト裏金事件』で阪神オーナーに届いた“怪文書”の中身 

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清武英利

清武英利Hidetoshi Kiyotake

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posted2020/11/14 17:02

「阪神スカウトから非常識なカネが…」 あの『ドラフト裏金事件』で阪神オーナーに届いた“怪文書”の中身<Number Web> photograph by KYODO

2004年ドラフト、曲折を経て、楽天への入団が決まった明大・一場靖弘

オーナーは辞めるか、辞めないか

(中略)それから1週間後の22日、辞任への波はいきなり襲ってきた。

 日本シリーズは2勝2敗の互角のまま第5戦を迎えている。この日、朝日新聞朝刊は〈横浜も一場投手に現金〉と報じた。すると明大野球部の監督は記者会見を開き、「匿名の手紙が届き、そこに横浜、阪神のスカウトが一場に金銭を渡した、と記されていた」という趣旨の話をしたのだった。これを受けて、東京放送(TBS)会長の砂原幸雄が横浜球団のオーナー職を引責辞任すると表明し、タイガースは正午と午後4時過ぎの2度、役員を集めて緊急の会議を開く事態になった。

 2度目の会議でのことである。「私が辞表を提出します」。頭を低くして繰り返す野崎に向けて、久万が言った。

「オーナーは辞めるか、辞めないか、だな」

 久万の真意はいつもつかみにくい。この日もそうだった。電鉄役員から声が上がった。

「今日になって当球団がこの問題に関して発表する理由は、横浜球団の事例が出たためであり、当球団が改めて調査したところ、25万円の支出が判明した。当球団の上層部としては寝耳に水である、ということを匂わせないといけない」

 すると、久万が口を開いた。

「そんなもので罰を打たれたら、という気はある。今日はどうするのか」

 久万は辞めたくないのだな、と野崎は思った。わしも辞めるんか、という声が聞こえたような気がしたが、それは久万の心の声だったかもしれない。

 すると、オーナーまでお辞めにならなくても、とかばう声が上がった。

【次ページ】 「こんなところに落とし穴があった」

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