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「阪神スカウトから非常識なカネが…」 あの『ドラフト裏金事件』で阪神オーナーに届いた“怪文書”の中身 

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清武英利

清武英利Hidetoshi Kiyotake

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posted2020/11/14 17:02

「阪神スカウトから非常識なカネが…」 あの『ドラフト裏金事件』で阪神オーナーに届いた“怪文書”の中身<Number Web> photograph by KYODO

2004年ドラフト、曲折を経て、楽天への入団が決まった明大・一場靖弘

迷走続きのスカウト戦略

 この年のタイガースのスカウト戦略は迷走を続けた。

 自由枠の有力候補だった一場をめぐって二転三転したからである。シニアディレクターに就いた星野(仙一)が明治大出身だったこともあり、当初は巨人や横浜ベイスターズなどと競合して獲得を目指したのだ。だが、一場が巨人を選んだことを知り、6月にはあきらめてしまっている。7月22日の役員会で、オーナーの久万が野崎に向かって、「当球団は、野間口、一場両投手を、なぜ巨人に取られたのか」と厳しく問うたことは既に記した。「カネです」と野崎は答えたものだった。

 ところが、8月13日に巨人が一場への裏金提供を認め、一場はもう獲得しないと表明すると、阪神の編成部は、星野や球団副本部長を押し立てて明大野球部合宿所を訪れ、再度、獲得の意思を表明している。これも9月10日時点のことで、その後、一場が横浜への入団希望を明らかにしたため、阪神は結局、10月10日に獲得を断念していた。そのニュースはスポーツ紙にも掲載された。

車代3万円、食事代10万円……

 だから野崎は、その告発を「何を今さら」と思った。

 ──うちには獲得できない選手や。しばらく様子を見よう。

 ただ、長くは先送りにできない問題であった。球団の経理伝票とスカウトたちの話では、怪文書の一部、つまり、「阪神のスカウトから数回にわたり、非常識な金が一場投手に渡っていた」という指摘についてはその文書の通りであり、そうしてみると、横浜球団が現金を渡していることも事実のように思えた。巨人、横浜球団もたぶん承知のことなのだ。

 一場を担当した阪神のスカウトは編成部課長で、前年の2003年12月に車代として3万円を渡し、続いて翌年1月と3月に会って、毎回、食事代として10万円と車代1万円を供与していたのだった。総額は25万円に上る。食事代を渡した際には一場から領収書を取っていた。球団の精算を前提にした供与だったのである。

 それがはっきりしたとき、野崎は辞めるしかないだろうと思い始めていた。責任の一端は彼にある。アマチュア選手の獲得にカネを使うことは彼も久万も望んでいなかったし、その支出も知らされていない。だが、「よそに負けんようなスカウト活動をやれ」とはっぱをかけたのは野崎だったからである。

【次ページ】 「おたくのスカウトたちはすぐ帰られますわ」

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