Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
「一方的に恋い焦がれている」巨人・菅野智之が語る“ダルビッシュマニア”をやめられない理由
posted2021/04/29 06:03
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kiichi Matsumoto
初出:「Sports Graphic Number」2020年11月5日発売号〈ダル・マニアの感嘆文 菅野智之「体も心も言葉もすべてがお手本」/肩書などはすべて当時〉
今季は開幕13連勝を記録し、リーグ制覇に大きく貢献した。最多勝もほぼ手中にした日本球界を代表するエースは、MLB最多勝投手の姿から何を学び、刺激を受けているのか。
日本のプロ野球選手にも多くの“ダルビッシュ信者”がいるが、今季のセ・リーグを制した巨人の菅野智之投手もその代表的な一人である。日常的にテレビの衛星中継やネットで登板試合を観るだけでは飽き足らず、YouTubeやツイッターなどのSNSでの発信も細かくチェックしている。
そのマニアの目からは、今年のダルビッシュの活躍の要因が、どんなところにあったと見えているのだろうか。
サイ・ヤング賞候補の理由は「引き出しの多さ」
「やっぱりコンディショニングですよね。去年は原因不明の体調不良に悩まされていたと、本人が話されていましたけど、原因不明っていうのが一番怖い。治しようがないからです。実は僕も去年、似たような症状を抱えていたので分かるんです。原因さえ分かれば治せる、修正できる。それが原因が分からないからどうしようもない。そういうもどかしさみたいなものは、僕も同じだったので何か凄く分かる気がしました。でも今年はそういうものがなくなって、それが好調へとつながる一番の要因になっているんじゃないかと僕は思います」
体調面の不安もあって、期待されながらシカゴ・カブス移籍後はなかなか結果を出せなかった。ただ、そんな状態から這い上がって、今季はサイ・ヤング賞の有力候補にまでなる活躍を見せた。その理由を菅野はダルビッシュの持つ引き出しの多さだと指摘する。
「まず、もの凄く自分のことを理解できていると思います。今の体調ならどういうことをやるべきなのかとか、そういうものを自分の中でピンポイントで把握できている。しかも僕なんか比べものにならないくらいに、壮大なスケールで色々なことを考えていると思いますし、今年も色んな球種に挑戦したり、何よりも探求心が凄いなって思いますね。真っ直ぐも平均で95から96マイル出ていますからね。やっぱりあの年齢でも、さらにパワーアップしている。実はそれってやっていて一番、難しいんですけど、その難しさが分かるから、素直に凄いなって。そう思わされてしまいます」
投手としての2人の共通項
投手のタイプとしては、2人に共通項は多い。多彩な変化球を投げ分けて、そのどの球種も勝負球として使うことができる。特にスライダーは、この2人を語る上で外すことのできない球種だが、ダルビッシュのスライダーの特長を菅野はどう見ているのだろうか。