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Bリーグ川崎・辻直人「“チームが勝てば”で満足してはダメ」批判と怪我を超え、ヒーローになる
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKAWASAKI BRAVE THUNDERS
posted2020/11/09 06:00
辻直人は明るく笑顔で長い挫折から這い上がろうとしている。暗い流れを吹き飛ばすその姿は、まさに令和のヒーローだ
ピンチを笑顔で救う、新しい時代のヒーロー
辻はこう続ける。
「ここ数年は『チームが勝てば、自分は調子が悪くてもええわ』と心のどこかで思っていました。でも、昔だったら、チームが勝ったとしても、自分の調子が悪かったら、本当に悔しかった。チームが勝つのは一番ですけど、『そこで満足していたらダメやな』と思えるようになったんですよ。もう一段上に行ける選手は、そういうメンタリティを持っていると思うから。チームを勝たせられる選手になれるかどうか、これからのバスケ人生が分かれる1年になると思います」
ファイナルのMVPは、理想のバスケットボール選手への道を進むときに通る門なのだ。
「Bリーグになってからそういう舞台に立つことがなかったので、そこからはどんな景色が見えるか想像もできません。でも、だから、楽しみで仕方ないんです。その舞台に立つために頑張りたいなと」
辻らしく、こう続けるのは忘れない。
「だから、優勝して、またここでインタビューを受けたいです! どんな景色が見えたのかも話したいんですけど……優勝して、チームに貢献したのにニック(ファジーカス)がMVPをとるようなことがあったら、文句を言わせてください(笑)。そういうのがたぶん、僕らしさではあるので!」
辻だって、努力している。でも、ストイックさはない。
血のにじむような努力を見せる、悲壮感のあるヒーローは昭和までだ。
「男は黙って……」が求められたのも平成まで。
ともすれば息が詰まりそうな状況で始まった令和の時代。
そこで輝くヒーローは、努力はそっと陰にしまい、悲壮感とも無縁。で、暗くなりそうなシーンを笑顔で救うことのできる者である。
今シーズン、辻が選んだ言葉
川崎のホーム、とどろきアリーナの2階には“隠れインスタ映えスポット”が設けられている。
そこには各選手の巨大写真が飾られていて、それぞれの選手のシーズンにかける想いが英語で記されている。
昨シーズンは「TO THE LIMIT!」と少し抽象的な意気込みを残していた辻は、今シーズンこんな言葉を選んだ。
「BECOME THE HERO」