サムライブルーの原材料BACK NUMBER
年俸「120円」の42歳Jリーガーが月20万円の個人スポンサーを断ったワケ 監督は「考え方が違うんだよなあ」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/11/08 11:02
対談において、プロとしての報酬に対する見解が異なったシュタルフ悠紀リヒャルト監督(左)と安彦考真
プロとしての評価をオカネでしてほしかった
シュタルフ 仕事に対する対価として年俸が発生しているわけで、オカネをもらうことで仕事には責任が伴うわけだから。個人的な意見を本音で言わせてもらえばアビさんにに限らず、選手が無償でもいいからプレーさせてほしいと言ってきたとしても、評価するのであれば、その評価に見合う対価を支払う必要があると思っています。アビさんの場合もクラブにも状況に甘えず、きちんとしたオカネを払ってほしかったという思いはあります。
アビさんは責任感の強い人だから、クラブからの年俸が120円の提示だったとしても、しっかり自分の責任を果たしてくれるけど、それができない選手もいる以上、クラブがきちんとした年俸を払っていないと厳しい要求ができないっていうことだってあるから。
バイトを辞めたほうがいいって言いたい
――2019年度クラブ経営情報開示資料を見てみると、Y.S.C.C.トップチームの人件費は総額3200万円。J3のなかでもダントツで低い数字になっています。アルバイトで生活費を稼ぐ選手も少なくないそうですね。
シュタルフ J3のなかでも予算規模が圧倒的に小さいクラブなので、ほかと同じ土俵で戦っているとは言い難いと思うんです。それでも去年、10個のチーム目標を立てて7個をクリアした。
できなかったのは1ケタ順位、得失点差をプラスで終えること、1試合平均の入場者数で2000人を超えること。7割を達成して、今年はその目標を15個に増やしました。3連敗しないとか現時点でクリアできていないこともあるけど、選手にとっても非常に厳しい環境のなかで対等に戦えている試合も少なくない。
アルバイトに費やしている時間を、体のケアに充ててもらうなどサッカーにもうちょっと専念できるような環境のなかで、どれだけの結果が出るのか見てみたいっていうのは僕のなかにありますよ。
安彦 もちろん生活のことはあるんだけど、個人的な意見としてはバイトをしている選手には、(バイトを)辞めたほうがいいって言いたいかな。プレーもおろそかになってしまう可能性がある。親のスネでもかじれるものがあれば、ですけど。頑張ってJ2、J1に上がって、恩返しすればいい。
逆にアルバイトをしているからって、言い訳にしてしまいがち。チーム目標が10個あるんだったら、じゃあ俺は個人目標を15個立てようとか選手のほうで本気になっていかないと。