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年俸「120円」の42歳Jリーガーが月20万円の個人スポンサーを断ったワケ 監督は「考え方が違うんだよなあ」 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/11/08 11:02

年俸「120円」の42歳Jリーガーが月20万円の個人スポンサーを断ったワケ 監督は「考え方が違うんだよなあ」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

対談において、プロとしての報酬に対する見解が異なったシュタルフ悠紀リヒャルト監督(左)と安彦考真

偉人や有名人の名言を使うのが凄くうまい

――シュタルフさんは監督のオファーがあったときに、別のところから育成の仕事のオファーなどあったんですか?

シュタルフ 前職のダブルパス社の時に、アセッサー(監査役)としてJ1・J2の40クラブの育成について監査を担当し、2年目と3年目はコンサルタントとしてクラブコンサルティングプロジェクトを担当したこともあり、育成の分やでは僕のことを知っていただいている方も増えてきていたので、条件の良いオファーはありました。でもトップチームの監督で勝負したいという思いが強かったですからね。ただ年俸120円ではやりませんよ(笑)。

安彦 僕が見ていてもシュタルフは本当に細かくいろいろとやっています。戦術的なロジックの準備もさすがなんですけど、一方で選手にパッションで訴えかけてくる。ベンチ外のときでも「やるぞ!」っていう雰囲気にしてくれる。偉人や有名人の名言を使うのが凄くうまいんですよ。

シュタルフ 2年目でもまだ効果ありますか? だいぶネタがつきてきて(笑)。

安彦 全然あるよ。サーフィンで海のなかにいて、ビッグウエーブが来る感じがあるんだよね。その言葉に乗ることで、スイッチが入るというか。波に乗らないと、何のために海に浮かんでいるのかっていう感じ。俺はもう、バンバン乗らせてもらっている(笑)。

ガンバ大阪U-23戦の前に松下幸之助の言葉を

――どんな名言があるのか知りたいですね。

シュタルフ たとえばアウェーのガンバ大阪U-23戦の前に、ミーティングでパナソニックの創業者である松下幸之助さんの「石の上にも3年という。しかし3年を1年で習得する努力を怠ってはならない」との言葉を使わせてもらいました。

 背景を説明させてもらうと、前の試合からメンバーを大幅に入れ替えて、若手中心のメンバーにしたんです。テーマは成長。そのためにはチャレンジしなきゃいけないと。試合で徹底的にチャレンジしてくれ、ということを分かってほしかったので。

安彦 0-2で負けたけど、中継で観ていても凄く気持ちが伝わってくるような試合だった。相手がガンバだから、松下幸之助さんってそこまで考えるからね、この人は(笑)。3日後、1敗もしていない首位の秋田と0-0でアウェーで引き分けているしね。

シュタルフ 秋田とは8月に0-1で負けているからそのときよりも成長した姿を見せてほしいと思って、このときもミーティングで松下幸之助さんの言葉を使わせてもらいました。

【次ページ】 メンバーから外れても「落ち込む時間がもったいない」

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