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那須川天心、裕樹の引退試合での神のように強く“人間”らしい姿「君のお父さんは最高のファイターだよ」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2020/11/05 17:01

那須川天心、裕樹の引退試合での神のように強く“人間”らしい姿「君のお父さんは最高のファイターだよ」<Number Web> photograph by Susumu Nagao

裕樹が引退試合の対戦相手に選んだのは那須川天心。圧倒的な強さの中に人間らしい素顔が見えた

勝った相手からでも学び、身につける

 この大会では「那須川天心挑戦者決定トーナメント」と銘打った4人制トーナメントも行なわれた。ベルトではなく“個人”への挑戦権をかけた闘いというのはかなり稀だ。優勝したのは志朗。ムエタイで活躍してきた選手だが昨年9月のRISEワールドシリーズトーナメントで那須川に敗れて以降、ヒジ打ち禁止のRISEルールに特化した練習を重ねてきた。

 再戦は来年2月を予定している。那須川曰く「一番困るのはトレーナーでしょう」。那須川と志朗は同じフィジカルトレーナーに指導を受け、バンデージも巻いてもらっている。一緒に練習することはないものの練習場所で顔を合わせることがあるし、大会一夜明け会見の会場でも雑談する2人の姿が見られた。

 フィジカルトレーニングのジムで居合わせた時、志朗は那須川のシャドーボクシングなどをこっそり見て技術やスピード感などを「盗んで」いたそうだ。打倒・天心への執念を感じさせる、挑戦者らしいエピソードだ。

 が、それを聞いた那須川はこともなげに言うのである。

「それ、僕もやってます」

 一度勝っているからとか、そういうことは関係ないらしい。那須川にとっては強い選手の動きを見て学び、真似して身につけようとするのは当然の行為なのだ。

“人間”を極める那須川天心は、神のように強い

 ABEMAの大会中継、そのテロップには「“神”那須川天心」というフレーズがあった。“神童”と呼ばれた那須川だがもはや子供ではないから、童を取って“神”。確かにそう表現されてもおかしくないだけの存在になっている。

 だが裕樹に対する感情にしても対戦相手候補から学ぼうという向上心にしても、那須川からは人間味も強く感じるのである。“人間”を極める姿勢があって、だから那須川天心は神のように強い。

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