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那須川天心に耳打ちした言葉とは? <独占>皇治インタビュー「あの子は人間、怪物ではない」 

text by

田中大貴

田中大貴Daiki Tanaka

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photograph byYuki Suenaga

posted2020/11/06 11:01

那須川天心に耳打ちした言葉とは? <独占>皇治インタビュー「あの子は人間、怪物ではない」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

那須川天心戦から1カ月余り、再びトレーニングに励む皇治はゆっくりとその激闘を振り返った

天心は人間、怪物ではない

――那須川天心戦ではどんな対策を考えていましたか?

 無駄に手を出さないこと。試合が終わって、もっと出しておけばよかった、出せなかったという思いはあります。でも天心君はカウンターがうますぎるから。みんな打ち合おうとして、カウンターを当てられて倒れてしまうんですよ。だから自分は無駄に手を出さずに圧をかけてロープに詰めて仕留める狙いやったんです。でも動きが速くてロープに詰められなかった。そこは自分の実力がまだまだ足りなかったですね。殴られるのは想定内でした。あれに合わせたかったですけど、うまかったですね。

――視聴者目線では天心選手の攻撃が目立ちました。

 試合前、天心君は「倒す」と言ってたじゃないですか。だから煽って「倒しに来させる」狙いもあったんです。そこにしか勝機がないとわかっていた。でも向こうは自分の得意な距離で、打ったら引く。それもうまさですけど、逆に言えば、(那須川が)その戦い方だから(俺を)倒せなかったんですよ。天心君が打ち合いに来たら俺も倒れたかもしれない。倒れないことは自分の中で当たり前と思ってやっていますけど。まぁ天心君は……打ち合ってくれなかったですね(笑)

――最初に膝をもらった時はどうでしたか?

 そんなに重さは感じなかったですね。これは大きく書いてもらわないとまた誤解を生むんですけど、彼はほんまに強い。あの若さでここまで格闘技界を盛り上げているのはすごいですよ。でもあの子は人間、怪物ではない。負けてる俺が言うのもなんですが、周りが過大評価しているのかなって。人間誰しも負けるときはくる、だから天心君にもいずれその時がくるでしょうね。

試合終了後に皇治が伝えたこと

――天心選手を仕留めるイメージはキックだったんですか、それとも左ボディ?

 うーん、というよりは“喧嘩”したかったですよ。こんだけみんな試合前に煽って盛り上がってくれて、それに天心君も余裕こいてたわけですからガンガン来てよと。でもそこに持ち込めなかったのは自分なんで。でもほんま立派ですよね、身体もちっちゃいのに大きい子らとやっているし。天心君はスポーツ選手、アスリートですよね。でも自分は、武尊とやった時のような試合をしたかった。だから(那須川に)男らしさみたいな部分は感じなかった。たぶん、俺とは一生仲良くなれないだろうな(笑)

――判定後に何か言葉をかけていましたよね?

 本人に伝わっているかどうかわからんですけど「格闘家としてトップ走ってんねんから、やることはわかっているやろ、頼んだよ」と言いました。俺は(団体の垣根を超えると)ファンと約束をしたわけなんで、損してもリスク背負ってでもやると思ってやってきた。あの2人(那須川、武尊)が何も言ってないなら、何もしなくていいんですよ。でも一度みんなの前で口にしたらならやれよという思いがあって。彼らがやらなかったら格闘技界は変わらないと思いますよ。ファイターである前に人間で漢なんだから約束は守らんとね。

【次ページ】 「もう1回喧嘩売ろうかな」

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