新人にとっては酷なシーズンとなった2020年

　確固たる決意を持って進んだ道だったが、今シーズンは新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、思い描いたようなスタートを切れなかったのではないだろうか。

　オープン戦が中断し、開幕も遅れた。

「自粛期間中、高校時代のチームメートとはときどき連絡を取っていたんですけど、大学に進んだ人は練習場所を探すのも大変だったみたいで『どんな練習をしてる？』とか『練習場、どうしてる？』って情報交換していて……。この時期は大変だなって話していました。そんな彼らに比べれば、自分は練習する施設には困らなかった。改めて、恵まれてるんだなと感じました」（井上）

　自主練習期間中は、投手としての先輩であり、寮生でもある今井達也と練習をともにした。自分に合ったトレーニングの方法や、ピッチングについて話す機会が多く「さすがプロで何年もやっているだけあって、意識が高いと思いました」と大いに刺激を受けた。

　体も一回り大きくなった。体重は80kgから3kgアップ。

「トレーニングの成果を感じます。股関節のトレーニングに力を入れてきたんですけど、下半身が強くなったことは実感しています。あとはシャドウピッチングにも力を入れてきました。三軍コーチの青木さん（勇人・投手コーチ）からは『徐々にプロの体になってきた』と言ってもらえました。そういう面では三軍でじっくり練習できてよかったと思っています。

「球の強さはアップしたかなと……」

　目標としていた公式戦での当番も、2試合経験した。

「球の強さはアップしたかなと……。プロ入り前から、ミットに届いたときのボールの強さ、初速と終速でスピードが変わらないボールを投げることを目標にしているので。いちばん自分が求めていることに関しては手応えを感じています」

　未曽有のシーズンがもうすぐ終わろうとしている。

「この1年、限られた条件の中で、自分でどう練習して、どんな練習ができて、どう成長できるかってことだけを考えてきました。そう考えると、1年目でこういう経験をした分、来シーズンに向けてもいい準備ができるはずと思っています」（井上）

　この1年間の経験が2年目以降の成長へとつながることを、井上は信じている。