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巨人、2連覇「3つの核心」 原采配の妙、澤村トレードの真相、馬車馬のように働いた“あの投手”
posted2020/10/31 11:03
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
独走のゴール。
終盤のもたつきはあったものの、それでも今年のセ・リーグは、巨人の強さだけが際立ったシーズンだった。
コロナ禍の中で約3カ月遅れで始まったペナントレースだったが、今年の巨人は開幕の阪神との3連戦に3連勝すると一気に波に乗った。その後は7月にヤクルトに一瞬、首位を明け渡す場面があったものの、ほぼトップを走りきってゴールまで突っ走った。
ただ優勝までの軌跡だけを見れば完勝とも思えるが、決して楽なシーズンではなかったというのが実情でもある。
3割打者不在の優勝は2014年以来。打線の好不調の波が激しいのはそのときと同じだったが、14年は菅野智之投手に杉内俊哉、内海哲也両左腕らが投手陣を支え、先発陣の防御率はリーグ1位と投手力で何とか持ちこたえたシーズンだった。
優勝の原動力となった3つのポイント
しかし今季は年間を通じてローテーションを守れた先発は菅野1人と、投手陣の台所事情も決して楽ではなかったはずである。
その中を走り抜けられた背景には、いくつかのポイントがあった。監督の采配、編成の決断、そして陰の立役者ともいえる1人の投手の存在と、その原動力となった3つのポイントを整理してみる。
【原采配の妙】
監督復帰していきなり5年ぶりの優勝を成し遂げた昨年もそうだったが、今年はさらに原辰徳監督の采配力に注目が集まった優勝でもある。
その原采配の白眉は、8月6日の増田大輝内野手を投手としてマウンドに上げた一手となるのだろう。
大差のついた負け試合で中継ぎ陣を温存するための野手の登板。当然、翌日には賛否両論が湧き上がったが、それでもこの思い切った決断を支持する声は意外と多かった。