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元冷蔵庫配達バイトのFW、DからAへ大出世監督…セリエA昇格勢の“苦労話”が熱い!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/10/28 20:00
最弱級戦力でも文句を言わないイタリアーノ。スペツィアはセリエA残留なるか
セリエDから一気にセリエAに!
「私が望んだ選手を揃えてもらったことはないよ。若い自分が監督に呼ばれるということは雇う側に(ギャラを抑えたり、チーム刷新が失敗した場合の責任を負わせたりできる)メリットがあるからということは承知している。与えられた戦力で期待以上の結果を出すのが優れた指導者だろう?」
イタリアーノは2014年に引退するまでベローナで長くプレーしたレジスタだった。代表にはかすりもしなかった。
ところが、指導者転向後、とんでもない離れ業を演じて「何者だ?」と一躍監督業界の話題になった。
2017-18シーズンにアルズィニャーノ・バルキャンポという小さなセリエD(4部)クラブを3部昇格プレーオフ優勝に導くと、翌18-19シーズンにはシチリア島の西端にある3部トラーパニの監督に呼ばれ、再びプレーオフを勝ち抜きセリエBに昇格させた。そして昨季、やはり就任1年目のスペツィアをセリエAに導いたのである。
無名の新米指導者ながら3年で4部からセリエA監督に駆け上がった前代未聞の指導力に注目が集まり、イタリアーノにはジェノアを始め複数のAクラブからお誘いがかかった。
無論、手痛い洗礼は覚悟している
だが、イタリアーノは最弱スペツィアとセリエAに挑むことを選んだ。昇格決定後の凱旋パレードで、港町を走る水路沿いの道を埋め尽くす何千という群衆を見たとき、"この光景を今年だけの思い出にしない"と思い定めたからだ。
無論、手痛い洗礼は覚悟している。
初陣となったサッスオーロとの2節では、補強が間に合わず先発に1部デビュー7人を並べて4失点大敗。「自分たちは生後15日の赤ん坊だ」と現実を知った。サン・シーロに乗り込んだ3節ミラン戦でも3失点の返り討ちに遭っている。
ただし、イタリアーノは4-3-3で攻めるスタイルを変えようとは思っていない。ベテランも若手も扱いはまったく平等。選手には“度胸・根性・忠誠心”の3つを求める。