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元冷蔵庫配達バイトのFW、DからAへ大出世監督…セリエA昇格勢の“苦労話”が熱い!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/10/28 20:00
最弱級戦力でも文句を言わないイタリアーノ。スペツィアはセリエA残留なるか
“スペツィアのイブラ”や苦労人の若手
9月末のウディネーゼ戦では“スペツィアのイブラ”FWガラビノフが2発を叩き込んで、クラブに歴史的勝利をプレゼントした。
途中出場したDFエルリッチのように這い上がってきた若手も頼もしい。パルマのユース部門にいた5年前、クラブの破産で所属先を失った。“パルマの孤児”たる彼にとっても、今季のセリエA挑戦にかける思いは強い。
アルバイト暮らしを4年続けたFW
5節を終えたスペツィアが14位で、昨季セリエB優勝のベネベントが13位と健闘する一方、残る昇格組のクロトーネは勝点1の最下位と苦戦中だ。
3季ぶりにセリエAに復帰した彼らもまた低予算クラブながら、大黒柱である昨季のB得点王FWシミーを始め、メンバーは多士済々だ。
今季の選手名鑑を作る上で、500人強に上ったセリエA全選手の中で最も印象に残ったのが、クロトーネのFWメシアスだ。彼の半生はとても60字には収めきれない。
クルゼイロで育ち、20歳のときに兄弟のツテを頼って単身イタリアへ渡って来たメシアスには代理人もなく、家電販売店の使い走りのアルバイト暮らしを4年続けた。
朝から番まで重い冷蔵庫配達に明け暮れ、「最初のクラブと契約して月給1500ユーロもらえたとき、"これでようやくサッカーだけで食える"と涙が出た」。
5年前まで5部アマリーグにいたハングリー根性の塊は、2-4で敗れはしたものの5節カリアリ戦で、嬉しいセリエA初ゴールも決めた。ど根性FWメシアスもまた華やかな舞台へ挑戦状を叩きつける1人なのだ。
「自分たちのスタイルはあきらめない」
過酷な残留争いには、冬にどう効果的補強をするかといった独自のノウハウが必要になる。そのためには前半戦のうちに格上との初顔合わせを凌ぎながら、急造のチーム戦力の見極めも指揮官には求められる。
セリエBプレーオフ決勝2ndレグに先発したスペツィアの11人の内、パルマ戦にも先発したのは4人にすぎない。指揮官イタリアーノは試せる選手はどんどん試す。
「選手たちには一人ひとりがチームの力になっていることを自覚してほしいんだ。我々には足りないところがまだたくさんある。だが、自分たちのスタイルはあきらめない」