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原辰徳監督、“デラロサ9回2死降板”の真意 「次の戦い」へ重圧の中でしか試せないこととは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/10/23 11:45
デラロサは絶対的な守護神ではあるが……(写真は7月5日中日戦)
優勝へのカウントダウンが始まる重圧の中でこそ
高橋や戸郷のピッチングはもちろん、山本にしても決して守備が下手なわけではない。それでも大舞台になるとミスが出る。本来の力を発揮できない。それは4年間、勝っていなかったチームとしての経験不足が露呈した場面でもあった。
だから優勝が決まってからでは決して試せないことがある。
マジックが1桁となり、優勝へのカウントダウンが始まるその重圧の中でこそ試せることがある。そのためにあえてデラロサを下ろしてでも、大江をマウンドに上げたのだったが……。結果はともかく、指揮官が大江の登板に込めた意味はそこにあった。
あえて「惨敗」という言葉で伝えた
2月のインタビュー。
日本シリーズに関する質問に強く首を振った原監督だったが、現実の問題としてはこうも語っていた。
「日本シリーズで我々は惨敗したチームだ、という現実を心に刻むことは、必ずペナントレースからいざ日本シリーズを戦うときになったらエネルギーになるはずです。だから僕はあえて2月1日のキャンプがスタートするときに『惨敗』という言葉で伝えました。あえて伝えた。そうして必ずそのときになったら、僕の言葉がチームを躍動させるエネルギーになるはずです」
日本一奪回への強い思いだけはひと時も忘れることなく、指揮官の胸に刻まれ続けていた。そしていまその目標に向かって巨人は静かに動き出したということなのである。
実はこの他にもシリーズを睨んで着実に進行しているシフトがある。
13日の広島戦で開幕からの連勝が13でストップしたエース・菅野智之投手は、コンディショニングの問題で先発を1回飛ばした。ただその一方で持ってきたのが、24日の土曜日の阪神戦。カード初戦ではなくあえて土曜日の第2戦に復帰させる。なぜならそこから約1カ月後の11月21日、同じ土曜日がまさにシリーズ第1戦となるからだ。
巨人と原監督の照準は確実に、次の戦いに絞り込まれている。