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「野村ノート」で昌平が躍進 “孫弟子”にも継承される準備野球、初の甲子園切符なるか
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/10/22 17:01
センバツ出場を左右する関東大会出場が決まり、喜ぶ昌平ナインと黒坂監督(左)
大会3日前に練習ストップ、なぜ?
しかし秋季県大会初戦の3日前、黒坂監督は吉野がきっかけで一度練習を止めた。群を抜く実力を持つ吉野に対して周囲が遠慮しているのか、厳しいことを言うべき場面で言えていなかった。シダックス時代にあった「大の大人が勝ってみんなで泣く」というような一体感が欠如していたことを見逃すことはできなかった。そのため選手たちだけでミーティングをさせ、チームは意見をぶつけ合いながら結束を強めた。
秋季県大会では吉野がその実力を発揮するだけでなく、春夏と大会未経験の選手たちが躍動。高い走塁意識やあらゆる場面での想定や準備、田村廉・吉川優一朗・川島新大の投手三本柱や二塁手・寺山太陽の好守が光った。夏は1年生から出場を続ける3年生たちが主力であったが、経験の少ない1、2年生たちも、こうして「昌平野球」をしっかりと継承している。
黒坂監督が「厳しい練習に耐えることができる」「ロースコアでも粘っていける」と評すこのチーム。春夏通じて初の甲子園出場というさらに新たな歴史を刻むべく、24日から始まる関東大会に万全の準備で臨む。初戦は25日の鎌倉学園高校(神奈川県)戦だ。