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ブラジル版“消えた天才” ロビーニョ、パト、ガンソ 世界一になれず伸び悩んだ男の今
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKaoru Watanabe(JMPA)/Naoki Ogura(JMPA)
posted2020/10/21 11:01
全盛期だった頃のロビーニョやアレシャンドレ・パト。世界一の選手になれなかった男たちは今……
「ロナウドの再来」パトも無所属
アレシャンドレ・パトは、華麗なテクニック、ずば抜けたスピード、抜群の決定力から「ロナウドの再来」と謳われた。
ブラジル南部の名門インテルナシオナルの下部組織出身。2006年11月、17歳2カ月でデビューし、試合開始直後に初得点。その翌月、世界クラブW杯に出場し、準決勝のアル・アハリ(エジプト)戦の前半に先制点を叩き出す。決勝のバルセロナ戦にも先発し、優勝に貢献した。
2008年3月、ブラジル代表に初招集されてスウェーデン代表との強化試合に途中出場すると、鮮やかなロングシュートを決めた。
その前年夏には移籍金2400万ユーロ(約30億円)でACミランへ移り、背番号7を与えられる。そして、すぐにゴールを決めてレギュラーに。絵に描いたようなシンデレラ・ストーリーで、「久々の超大型ストライカーが出現した」と騒がれた。
しかし、彼の場合は度重なる故障がすべてを台無しにした。
2008年以降は足首、太もも、鎖骨などの怪我を繰り返し、2011-12年以降はプレー内容が急低下。2013年以降、ブラジル、イングランド、スペイン、中国などのクラブを渡り歩いたが、20歳前後の頃のような輝きは二度と戻らなかった。
昨年3月、サンパウロへ移籍したが、今年8月に退団。9月に31歳になったが、10月中旬現在、所属クラブがない。
ネイマールとともに期待されたガンソ
パウロ・エンリケ・ガンソは左利きのテクニシャンで、状況判断が素晴らしく、相手守備陣のわずかな隙を突いて絶妙のスルーパスを繰り出すかと思えば、自らもミドルシュートを叩き込む。
15歳でサントスの下部組織に加わり、2008年、18歳でデビュー。すぐにレギュラーとなり、2009年以降、2歳年下のネイマールと共にサントスの攻撃の主軸となった。
2人は2010年W杯出場が期待されたが、当時のドゥンガ監督は「才能は素晴らしいが、まだ経験不足」として招集を見送った。その際、国民の多くがとりわけ落選を惜しんだのはガンソの方だった。
2010年W杯終了後、ネイマールと共にブラジル代表に初招集され、「今後10年、セレソンの中盤を担う男」と言われた。