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樋口新葉の3アクセル「応援のおかげ」 有観客のジャパンオープン、拍手に背中を押されて
posted2020/10/11 11:02
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Sunao Noto
「皆さんの応援で力を出すことが出来ました。本当にありがとうございました!」
公式の場で初めてトリプルアクセルを着氷させた樋口新葉は10月3日、「ジャパンオープン」での演技のあと、感慨深そうに語った。
コロナ禍のなか始まったフィギュアスケートの2020-21シーズン。各ブロック大会と西日本・東日本選手権など11月上旬の試合までは、無観客での開催がすでに決定している。そんななか「ジャパンオープン」は10月上旬にもかかわらず、さいたまスーパーアリーナで観客を入れての開催に踏み切った。コロナ禍での有観客試合は必要性があったのか、そしてファンや選手たちにどんな効果があったのだろうか。
まず選手や関係者らは、2週間前から体温と体調をアプリで管理し、さらに当日も検温し、37.5℃以上の人は会場内に立ち入ることが出来ないという体制をとった。インタビューも選手とメディアの接触を無くすため、隣の部屋に分かれて入り、Zoomを使って会見を行った。
予想は良い意味で裏切られた
また一般席は1席置きでの配置。当日の検温のほか、チケットのもぎりは自身で行う、大声での声援の禁止、プレゼントの禁止、連絡先の事前登録など、出来うる限りの対策を講じていた。しかもチケット代は、1万4000~3万円と高額な設定で、金額的にもハードルは高かった。結果として集まった観客は1292人。2019年の世界選手権では1万8000枚のチケットが完売となったアリーナは、かなりガランとした印象だった。
正直なところ試合が始まるまでは、「こんな少ない観客数で、声援もなし、拍手だけの応援では盛り上がらないだろう」と思い込んでいた。が、その予想は良い意味で裏切られた。
プログラム前半は男子4人による演技。選手たちがリンクに現れると、温かい拍手が起き、会場にこだまする。“たった1200人”と思っていたが、よく考えれば1000人以上というのは相当な数。選手たちの気持ちを高揚させるのに十分だった。