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池江璃花子が初めてのインカレで見せた涙のワケ 「恥ずかしかった」復帰戦を越えて見つけたもの
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byHiroyuki Nakamura
posted2020/10/08 17:01
初めてのインカレで確かな手ごたえをつかんだ池江璃花子。自分のペースを大切に泳ぎ続ける
不言実行の思いで立てていた目標
胸の奥に、不言実行の思いで立てていた目標があったことも明かした。
「口には出していなかったのですが、この試合でまずは25秒8台が出ればいいなと思っていて、実際にしっかり出てくれました」
前述のとおり、予選タイムは25秒87。目尻ににじませた涙の意味を聞かれ、「やっとこの試合に出られたといううれしさや、25秒台を出せたうれしさや、大学の先輩を見てすごくほっとして」と答えた。
決勝レースについてはこのように振り返った。
「予選で出し切った感があったので、決勝は変な緊張感もなく、すごく気持ちよく泳げました」
決勝のタイムは25秒62。予選のタイムを0秒25縮める快泳で、8月の復帰戦との比較では約0秒7も速くなっていた。
前とは違う自分を見せるのが恥ずかしかった
8月のレースをあらためて振り返った場面では、重い病気からの復帰がいかにデリケートなものであるのかを感じさせるニュアンスがあった。
「前回(8月)は不安要素が大きいまま、レースに臨んだのですが、このままじゃ駄目だなと思って、練習再開後にすぐ切り替えました」
不安の正体とは何だったのだろうか。
「前回は細い体で、前とは違う自分を見せるのがちょっと恥ずかしいという気持ちがありました」
このままじゃ駄目というのは「楽しみながら泳ぎたかったから」。泳ぐからには楽しもうという気持ちになったのだという。すると、さまざまなことが加速をかけるように前に進んだ。
「とにかく練習を楽しもうという感じで泳いでいたら、いつの間にか泳ぎもタイムもどんどん良い方向に上がっていきました。今回の試合は楽しみの方が強くて、自信がすごくありました。ポジティブな試合になったと思います」