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池江璃花子が初めてのインカレで見せた涙のワケ 「恥ずかしかった」復帰戦を越えて見つけたもの

posted2020/10/08 17:01

 
池江璃花子が初めてのインカレで見せた涙のワケ 「恥ずかしかった」復帰戦を越えて見つけたもの<Number Web> photograph by Hiroyuki Nakamura

初めてのインカレで確かな手ごたえをつかんだ池江璃花子。自分のペースを大切に泳ぎ続ける

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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Hiroyuki Nakamura

 1年前から目標として定めていた「インカレ」の舞台にとうとう立った。

 10月1日から4日まで行なわれた「第96回日本学生選手権水泳競技大会(インカレ)」。ジュニアの頃から慣れ親しんでいる東京辰巳国際水泳場で、白血病から今夏に復帰した池江璃花子(ルネサンス)が、日大水泳部の一員として初出場を果たした。

 昨年は闘病中の一時退院期間に大会があり、スタンドからチームメートを応援した。そして、「来年は自分が絶対にインカレに出る」と誓いを立てていた。

 最初のレースは10月1日午後3時過ぎからの女子50m自由形予選。池江のエントリータイムの種目別ランキングは17位だったから、決勝に残れるかどうかというところだろう。

 ただ、池江は、1年7カ月ぶりのレース復帰となった8月29日の東京都特別大会・女子50m自由形で、日本記録である24秒21の自己ベストからわずか2秒遅れの26秒32を出して、周囲を驚かせている。指導する西崎勇コーチも「彼女は良い意味で期待を裏切ってくれる」と脱帽していた。それから1カ月が経ち、上積みも期待できる。

「泳ぐ前から感情がわき上がってきた」

 果たして今回も池江は、周囲をあっと言わせる泳ぎを見せた。予選のタイムは25秒87。6位で決勝に進むと、予選からわずか2時間後の午後5時過ぎに行なわれた決勝では、中盤からみるみる上位を追い上げていき、4位でゴールした。

 レース後、池江はマスクをつけてインタビューエリアにやって来た。ウイルス感染防止の観点から、対面で質問をするのは新聞やテレビなど各カテゴリーの代表数名のみ。ほかの記者陣はリモート取材で、画面越しに質問ができる仕組みになっている。池江はハキハキとした口調で、しかし言葉をかみしめるように言った。

「このインカレを目標としてこの1年間頑張ってきたので、ちょっと感慨深かったです。予選のレースでは、泳ぐ前から感情がわき上がってくる感じもありました」

【次ページ】 不言実行の思いで立てていた目標

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