ジャッジ5人のうち4人が＋5を出した

　しかし、鍵山の演技の余韻が残るなか氷に降りた佐藤も、負けてはいなかった。冒頭の「4回転トウループ＋3回転トウループ」は、スピード、高さ、音楽との一体感、すべての面で完璧。目の裏に焼き付いて離れないようなかっこいい飛躍で、ジャッジ5人のうち4人が＋5を出す、いわば“満点”で、1つのジャンプだけで18.45点を叩き出した。

　ところが決め技である4回転ルッツを「最近ちょっと調子が悪かったので」と回避し、3回転ルッツに。トリプルアクセルはタイミングが合わずに転倒してしまった。結果としてショートは77.90点と、伸びなかった。

「身体自体は動いていたのですが、初戦の難しさもあり、うまく行きませんでした。フリーのほうが得意なので、自分らしく頑張りたいです」と、言葉少なに話した。

誰もが予想しない作戦に踏み切った

　そして翌日のフリー。佐藤は勝負に出た。9月頃からずっと不調が続いており封印していた4回転ルッツを、フリーの朝の公式練習で久しぶりに成功。試合で入れることにしたのだ。

「最近の練習では、跳ぼう跳ぼうというイメージが強すぎて、自分ではちゃんと降りられる感覚で跳んだつもりでも回りすぎていました。力を抜いて自然になにも考えずに跳ぶことが大事かなと思います」

　しかし試合の緊張感もあり、冒頭で4回転ルッツに挑戦するが、2回転になってしまい転倒した。すぐに立ち上がり、続く4回転サルコウと4回転トウループを成功。すると、誰もが予想しない作戦に踏み切った。なんと4つ目のジャンプに、練習では入れたこともない2度目の4回転ルッツを組み込んだのだ。

「4回転サルコウも4回転トウループも降りたので、この流れで4回転ルッツも行けるかなと思いました。最近全然4回転ルッツを跳べていなかったので（試合で）降りておきたかったし、朝の練習でも降りられたし、今なら、という気持ちがありました。それでもう1回チャレンジしようと思ったんです」

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