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「サラブレッドの堅実さ」鍵山優真と「無茶なほどの爆発力」佐藤駿、2人だけの公式戦詳報
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byYukihito Taguchi
posted2020/10/08 17:02
昨季の自己ベストから鍵山(左)は+16.60の287.21点、佐藤は-56.69の198.42点と明暗が分かれた
ローリー・ニコルがリモートで振り付け
鍵山の場合は、ジャンプの流れと飛距離、姿勢の良さ、タイミングといったベーシックな技術面を磨きあげることでプラス評価を得る。
「ステップから跳ぶ」「音楽に合っている」といった現在のルールを意識した跳び方ではなく、あくまでもお手本のようなジャンプという部分が、彼の持ち味だろう。
演技の面でも、9月に振り付けたばかりとは思えない、ノリの良さが光った。
プログラムは、浅田真央らのプログラムを手がけてきたローリー・ニコルにリモートで振り付けてもらったという『Vocussion』。シルクロードを旅するなかで、さまざまな出会いや、盗賊との戦いなどが起こるという緩急あふれるナンバーだ。
演技直後は、ステップの細かい足捌きで「つまずいた」と苦笑いしていたが、 演技全体に勢いがあり、観る者をシルクロードの旅へといざなうような演技だった。
「『ドリーム・オン・アイス』の後、衣装を変更して、少しシュッとした感じにしてスタイルをよく見せようと思いました。演技の動きも明確に見えて、印象が変わると思います。振付も『ドリーム・オン・アイス』の動画をニコルさんに送って手直ししました。
最後のポーズは『ちょっと辛そうに見えるので、やりやすいように』と言われて、立ったままのポーズにしました。ステップの途中で止まるところも、両足を片足に変えたことで格好良くなったと思います」
演技構成点(PCS)は、パフォーマンスは8.5、スケート技術と音楽解釈で8.33をマークし、5項目すべてで8点を超えた。
ショートは予想以上の高得点に
自己ベストを記録した昨季の四大陸選手権でも、ショートのPCSで8点を超えたのは2項目だけ。これから滑り込むほどに、名プログラムへと昇華していくことを予感させる評価だった。
ショートの得点は、100点に迫る98.46点。予想以上の高得点に、鍵山は自信を得た様子だった。
「まだ完全に滑り込めてはいなかったので、演技構成点がちょっと出ないかなと思っていたんですが、100点近くまで行けたのは正直びっくりしました。あと2点で100点だったので、試合を重ねるごとに徐々に点数を上げていけたら良いと思います」