F1ピットストップBACK NUMBER
【F1参戦終了へ】ホンダとセナ、ブラジルGPをつないでいた「見えない糸」の記憶
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHonda
posted2020/10/02 20:40
サンパウロ市内、モルンビーの丘の墓地にあるセナの墓
ブラジルGPは、セナ、岡田、木村を今もつないでいる。
その木村の忘れられないレースが、ジョーダン・ホンダのメカニックだった'02年の日本GPだ。
なかなか成績が残せないまま迎えた母国グランプリ。しかも、フリー走行でエンジンブロー。予選まで40分を切る中、木村はエンジン交換を間に合わせることに成功した。
こうして、佐藤琢磨はシーズン自己ベストとなる予選7位を獲得。レースでは5位に入賞し、F1ドライバーとして初ポイントを獲得したのだ。
「最終コーナーを立ち上がってくる黄色いマシンが見えたときのことは、いまでも鮮明に覚えています。大変だったシーズンもこの鈴鹿の琢磨の走りで報われました。当時を振り返ると苦しいの連続で、正直、何度も投げ出したくなるようなこともありました。だからこそ、そういう経験の後で得られる達成感というのは格別。いまのホンダも成績が振るわず、みんな大変だと思いますが、その努力がいつか必ず報われ、私の経験した以上の達成感を味わう日が来ると信じています」(木村)
セナと岡田、岡田と木村。ブラジルGPは、彼らを見えない糸でつないでいた。