競馬PRESSBACK NUMBER
武豊、欧州の名伯楽から招かれるスゴさ 唯一無二の偉大なジョッキーが挑む9度目の凱旋門賞
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/10/02 20:01
昨年の凱旋門賞で武が騎乗したソフトライト(6着)
武豊は昨年も名伯楽から声がかかった
そんな日本の天才ジョッキーは、昨年も話題を提供してくれた。2019年10月6日。12頭立てで行われた凱旋門賞。同騎手は当初、エイダン・オブライエン厩舎のブルームで参戦する予定でいた。しかし、同馬の状態が整わず回避。これで一旦、この年の大一番への参戦は無くなったかと思われた。
しかし、同じ日に行われる別のGIでの騎乗予定はそのまま残していたため、他の陣営から声がかかる事になった。それがジャン・クロード・ルジェ厩舎のソフトライトだった。
フランスの調教師といえば日本では前出のファーブル調教師が有名だが、J・C・ルジェ調教師はそのファーブル調教師と二大巨頭と呼ばれるほどの伯楽。凱旋門賞こそ未勝利だが、ダービーにあたるジョケクラブ賞(GI)とオークスに相当するディアヌ賞(GI)はあわせて8勝もしている名調教師だ。
「良いジョッキーが空いていたから頼んだ」
昨年、現地でJ・C・ルジェ調教師にどういう経緯で武豊騎手に依頼する事になったのか、と問うと、大調教師は表情一つ変えず、次のように答えた。
「良いジョッキーが空いていたから頼んだ。それだけの事ですよ」
私はこれと似たような言葉を20年近く前、やはりフランスで聞いた事があった。
先述した通りファーブル調教師のサガシティーで凱旋門賞に臨んだのは2001年の話。当時、武豊騎手はフランスに長期滞在して、現地の競馬に参戦していた。翌年の2002年も同様のジョッキーライフを過ごした。勿論、本人の希望もあったわけだが、実はこの時の滞在も現地の調教師に請われて実現したモノだった。スワーヴダンサー(1991年)やモンジュー(1999年)などで凱旋門賞を勝ち、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのあったジョン・ハモンド調教師が、直々に武豊騎手を招聘。同厩舎の主戦騎手としてフランスに迎えたのである。