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錦織圭の復活はゆっくりでいい 18歳の勢いに屈するも「5、6割」で見せた100点のプレー
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2020/09/20 20:00
イタリア国際では2回戦で姿を消した錦織圭。とはいえ徐々に“らしさ”が戻ってきているのも事実だ
サーブ&ボレーの多用と体力面
右肘は予防のためかサポーターを巻いているが、気にする様子はなく、技術面を含めて全体的には大きな問題はなさそうだ。先週のツアー大会で1回戦負けした後にもこのコラムで記したが、ローマでの2戦を通して、万全と言える状態に戻るまでそれほど長い時間は掛からないのでは、という思いはさらに強まった。
気になる点があるとすれば、既に述べたように大事なポイントの取りこぼしが目立ったことに加え、体力面だろう。2回戦の終盤は足が止まり、早めに勝負を決めようとするシーンが目立った。
「そんなに(前に)出る予定ではなかったんですけど、ちょっと出過ぎましたね、2セット目は。出ないといけなかったというか……」
サーブアンドボレーを多用した点を問われた際の返答だ。本来なら球足が遅いクレーコートでじっくりラリー勝負をし、ショットのリズムを取り戻したいはずだが、まだ体力面で不安があるから早めに仕掛けるしかなかった、と読み取れる。
復活への道のりは、ゆっくりでいい
錦織にとって、グランドスラムの復帰戦となる全仏オープンは27日に開幕する。その直前にはヨーロピアン・オープン(ハンブルク/21日開幕)にも出場する。
大舞台の前週にツアー大会に出るのは錦織にとって異例だが、復活に向けて焦ることなくじっくり調整を続けるという姿勢の表れだ。試合で必要な体力は、練習だけでなく試合を重ねることで本当に身に付くということだろう。
「今年はグランドスラムに照準を合わせるとか、そこまで言っていられない状況。なるべく試合数をこなせればいいかなというのが、第一目標」
日本男子としての歴史を塗り替え続けた実績を考えた時、周囲はつい多くを望んでしまいがちだが、今は自分のペースで調子を取り戻していくことが一番大事。何より本人がそれを強く自覚していることが安心感を与え、頼もしささえ感じる。
復活への道のりは、ゆっくり進めばいい。