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錦織圭の復活はゆっくりでいい 18歳の勢いに屈するも「5、6割」で見せた100点のプレー
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2020/09/20 20:00
イタリア国際では2回戦で姿を消した錦織圭。とはいえ徐々に“らしさ”が戻ってきているのも事実だ
錦織は立ち上がり、集中していた
錦織は立ち上がり、集中していた。
第1セット第1ゲームは相手の強力なサーブをうまくリターンし、ラリー戦で少しでも甘い球が来れば鋭いショットでポイントを奪った。このセットで最も悔やまれたのが、第3ゲームで握った3度のブレークポイント。勝負どころで錦織はリターンミスが出た上、相手のドロップショットや頭近くまで跳ね上がるキックサーブに苦しみ、チャンスを逃してしまう。
逆に勢いづいた相手は次のゲームでショットの攻撃性が増し、先にサービスゲームを破られてしまった。セット終盤からは、ラリー戦で打ち負ける場面が増え始めた。
トイレ休憩を挟み、気分転換を図って迎えた第2セット。錦織は第5ゲームでドロップショットのミスやダブルフォールトを犯して2度のブレークポイントを握られたが、要所で見事なフォアの逆クロスを打ち抜き、何とかしのいだ。ただ、試合時間がまだ1時間を超えて間もないのこの時点で既に脚に疲労がたまってきたようで、ベンチでは両足を揺すり、手で太ももの筋肉をほぐしていた。
第8ゲームにあった、一番の見どころ
リターンゲームで攻めの姿勢を強く見せたのが第6ゲーム。リスクを覚悟で相手のセカンドサーブを前でたたき、2度のブレークチャンスを迎えた。しかし、ひるむことのないムゼッティのショットや錦織自身のミスもあり、第1セットと同様に先にブレークするチャンスを手放してしまった。
良くも悪くも、この試合で一番の見どころが詰まったのが第8ゲームだった。0-30の場面で、錦織はベースラインの中に踏み込んでからのリターンで相手のセカンドサーブをたたき、瞬時にネットに詰める。
甘い返球を誘い、最後はバックのボレーで一丁上がり……という場面で目の前のネットに掛けた。復帰後、進境を見せるネットプレーは新たな得意技になりつつあるが、大事な場面で凡ミスを犯し、「あんな簡単なボールをミスったのが、大きな1ポイントになってしまった。取れていたら展開は変わっていたと思う」と後悔した。