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鍵山優真、佐藤駿、友野一希、4回転バトルと「ガンバー」の“熱情”の関係
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byDreams on ICE 2020
posted2020/09/20 17:00
ライバルであり仲間でもある(左から)鍵山優真、佐藤駿、友野一希
佐藤が1人で大きな声援を送っていた
そして迎えた、夕方のフリー。本当は3人ともにクタクタになっていたことだろう。6分間練習が始まると、3人とも明らかに前日よりもジャンプが乱れている。いかに朝の練習に本気で挑んでいたかを物語っていた。
フリー本番は鍵山から。直前にプログラムを変更した『ロード・オブ・ザ・リング』のミュージカル版。冒頭の「4回転サルコウ+3回転トウループ」を勢いよく決めたが、続く4回転トウループと、後半の4回転サルコウは転倒した。
すると、リンクサイドから「ガンバー」という太い声と共に、力強い拍手が聞こえてきた。今回はコロナウイルス対策の運営上、コーチも関係者もリンクサイドには入れないはず。よく見ると、選手通路にいる佐藤が1人で大きな声援を送っていたのだ。鍵山も、最後まで滑り抜くと満足そうな笑顔を見せた。
「後半に4回転とトリプルアクセルが入っているので、体力がすごく大事になると感じました。冒頭の4回転サルコウは、普段の練習でも決めていたので良かったと思います」
鍵山と佐藤から「ガンバー」の声援
続く佐藤は、ショートと同じリショー振付の『Battle of the Kings』。冒頭の4回転ルッツは勢いがありすぎて後ろに吹っ飛ばされた。続く4回転サルコウは成功、4回転トウループも1本は転倒したが、その直後に4回転トウループ+3回転トウループを降りた。
今度は、滑り終えた鍵山とこれから滑る友野がともに、手が痛くなりそうなくらいの拍手を1つ1つのジャンプに送っていた。佐藤は言う。
「初めて4回転4本に挑戦しましたが、4回転ルッツのミスもありましたし、今後もっと練習してノーミスできる様にしたいです。体力はけっこうキツかったのですが、最後は根性で頑張りました」
そして鍵山と佐藤からの「ガンバー」の声援を受けながら、最終滑走の友野が登場。4回転トウループは高さがあったが転倒し、続く4回転サルコウは両足着氷に。
次のトリプルアクセルを成功すると、鍵山と佐藤は「ヒュー」と叫んで盛り上げた。無観客のリンクに、男子2人の太い声が響き渡る。友野は演技後半の4回転サルコウも何とか耐えると、熟練の演技力で『ムーラン・ルージュ』の世界を展開した。
友野は「今年から本格的に4回転3本を入れようと練習しています。今日は、まだまだ後半に体力がないと感じました」と話した。
4回転バトルと、力いっぱいの声援。3人は、五輪切符を争うライバルであり、お互いを高め合う仲間でもある。コロナ禍のなか始まる2020-21シーズンだが、選手たちの熱情と成長は決して止まることはないと感じた。