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ポルトガル移籍・藤本寛也の代理人に聞くコロナ禍の欧州移籍市場、日本人の相場観
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/09/19 11:40
まだJ1での実績はないながら、ポルトガルへと旅立っていった藤本寛也。こういったケースは今後も増えていきそうだ
交渉がまとまるまで約4カ月を要した
味の素スタジアムのスタンドから故障の場面を目撃した富永氏はこう語る。
「自分にとって、生涯忘れられない記憶のひとつ。寛也は悔しかったと思います。鹿児島戦はキャプテンに就任して最初の試合でした。大好きなヴェルディのために責任を果たそうと臨んだゲームだったことに加え、海外移籍が初めて具体性を帯びた矢先でしたから。二重の意味でショックなアクシデント。当時、移籍が実現する可能性は低かったかもしれませんが、話し合いのテーブルにつくことすらできなかった」
再び、チャンスが巡ってきたのが今回のオファーだった。
「今春、新型コロナウイルスによるリーグ中断中に話があり、交渉がまとまるまで約4カ月を要しました。選手、双方のクラブ、仲介する事務所の三者がウイン・ウインの関係になるのが、われわれのポリシー。それを可能にするためのスキームをつくり、コロナによる特殊な状況のなか、互いに歩み寄って妥結するまで相応の時間がかかったということです。
ケースバイケースではありますが、長い目で見て、日本サッカーの価値を下落させるような移籍は可能な限り避けるべきで、私たちもそのような仕事には極力携わりたくありません」
中島翔哉をはじめ日本人の評価がアップ
獲得の打診は、ともにポルトガルから。これは偶然の一致か。
「初めてヨーロッパに移籍する選手は、リーグの知名度やクラブの規模ではなく出場機会が第一。その点、ポルトガル、ベルギー、オーストリア、スイス、デンマークといった国々は重要なリーグです。寛也の場合は、その中でプレースタイルに適しているだろうポルトガルやスペイン2部のクラブを中心にアプローチを仕掛けていました。
また、ポルトガルで日本人選手に対する評価が上がっているというのも影響していますね。ヴェルディ出身の中島翔哉選手をはじめ、活躍して高く売れる選手が出現したことで見る眼が変わってきた」