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井上尚弥への刺客、ジェイソン・マロニー単独インタビュー 52年前の“番狂わせ”再現を狙う 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2020/09/11 11:00

井上尚弥への刺客、ジェイソン・マロニー単独インタビュー 52年前の“番狂わせ”再現を狙う<Number Web> photograph by Getty Images

井上のラスベガスデビュー戦の相手に選ばれたジェイソン・マロニー。モンスター狩りへ準備は着々のようだ。

原田対ローズは記事で読んだ

――今回の井上戦はオーストラリアでも大きな注目を浴びると思いますが、かけられる2つの世界タイトルのうち、IBF王座はもともとオーストラリアの英雄であるジェフ・フェネックが持っていたタイトルでもありますね。

JM:そうそう、そうなんです。2018年10月、当時そのタイトルを持っていたエマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に挑み、どうしても勝ちたかったのですが、スプリット・ディシジョン(1-2の判定)という非常に悔しい形で夢破れてしまいました。

 ただ、あの試合でも私は多くを学び、ここで再び同じタイトルに挑む機会が巡って来たのです。2度目のチャンスを逃すわけにはいきません。オーストラリアのボクシング界にとって、歴史的なベルトですからね。私の夢は世界チャンピオンになることであり、IBFのタイトルでなければならないというわけではありませんが、母国の歴史を考えれば私がこの王座を奪取することには特別な意味があるはずです。今の私はハングリーですし、今度こそ何としても勝ちたいと熱望しています。

――日本、オーストラリアの選手の世界バンタム級タイトル戦ということで、今戦を1960年代に行われたファイティング原田対ライオネル・ローズ、ジョニー・ファメション戦に比較するオーストラリアの現地記事も読みました。ローズが原田を攻略したような番狂わせを起こせば、すごい騒ぎになりそうですね。

JM:ファイティング原田対ライオネル・ローズの記事は私も読みました。ローズのやり遂げたことはオーストラリアのボクシング史上に残る偉業ですね。トップランクのボブ・アラム・プロモーターは、私と井上の試合は年間最高試合の候補になると話していましたが、私もその意見に同意します。尊敬する井上とのタイトル戦は素晴らしいファイトになるでしょうし、その試合の主役の1人になれることに興奮しています。モチベーションは最高だし、実際にリングに立つ日が今からもう待ちきれません。

予想はやはり井上の絶対有利

 マロニーに話を聞くのは6月のバエズ戦後に次いで2度目だが、誰にでも好感を持たれるタイプのナイスガイである。非常に謙虚で礼儀正しく、インタビューの冒頭に片言の日本語で挨拶して笑う茶目っ気もある。井上戦に関しても「勝てると信じている」と一見すると大胆な勝利宣言もするが、一方で「階級最強」と呼ぶ王者に対して、率直なリスペクトを抱いていることが感じられるはずだ。

 プロデビューから17連勝を飾ったマロニーだったが、上記の通り、2018年にIBF世界バンタム級王者のロドリゲスに挑んで僅差の判定負けを喫した。この初黒星以降、「決して現状に満足せず、さらなる向上を渇望するようになりました。初めての世界戦で悲願を達成できなかったのは残念でしたが、私は様々な面でより良いボクサーになっているはずです」とも述べている。挫折を味わい、実際にその後、大きく成長していることは間違いないのだろう。

 前WBA世界Sフライ級王者の双子の弟アンドリューとともにオーストラリアの期待を背負うマロニーに、ファイティング原田対ライオネル・ローズ戦のようなミラクルストーリーを再現するチャンスがあるのかどうかはわからない。

 予想はやはり井上が絶対有利と目されることが濃厚。ただ、真摯な姿勢の29歳の挑戦者が、井上戦にも最高のコンディションで臨んでくることだけは間違いなさそうだ。

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