濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
完成度は「1億%!」。17歳のチャンピオン・鈴季すずはプロレスに全てを捧ぐ。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2020/09/02 19:00
キャリア1年7カ月、17歳での戴冠となった鈴季すず。これからどんなレスラーになっていくのだろう。
「エグさ」が女子プロレスの面白さ。
最大の魅力は感情表現だ。嬉しい時も悔しい時も、気合いも憤怒も、とにかくすべてが全開になる。つまり顔に出る。曰く「顔芸レスラー(笑)」だ。
「男子のプロレスは肉体がぶつかり合う迫力が凄いですけど、女子プロレスは感情のぶつかり合いが凄いんですよ。髪の毛掴んで引きずり回すし、マイク持ったら相手の内面にズカズカ踏み込む(笑)。女のエグさじゃないですけど、感情を全部さらけ出せるのが女子プロレスの面白さだと思います。やってるほうとしても、感情をむき出しにできるのって楽しいんですよ。お客さんには私のすべてを見てほしい」
そういう女子プロレスを、もっと多くの人に伝えたいとすずは言う。ベルトはそのための武器になるし、17歳という年齢がクローズアップされるのも構わない。
「実力で評価してほしい? いや、まずはおいしければいいです(笑)。だって“17歳でチャンピオン”ってインパクトありますもんね」
藤井聡太の存在が大きな刺激に。
17歳でタイトル奪取という“快挙”は、将棋の藤井聡太と同じだ。藤井の存在は、すずの大きな刺激になっている。
「私は将棋のことは全然知らないんです、駒の種類とか。でも同い年の人が大活躍してるって聞くと気になってくる。将棋ってどんな世界なんだろうって思うんですよ。プロレスも似てるなって。10代の子はプロレスのことあまり知らないはず。プロレスは大人が見るもの、大人がやるものっていうイメージもありますし。でも“17歳でチャンピオンになった子がいる”と知ったら、若い人が興味を持つきっかけになると思うんですよね。“10代でもやってる人がいるんだ”とか“私でもできるのかも”と思ってほしい」
だから時間がないのだと考えてもいる。もうすぐ18歳。20歳になるまで「あと2年しかない」と。
「10代のチャンピオンという話題性を活かしてプロレスを広めたいですし、20歳までにレスラー・鈴季すずの価値を確立させたい。大人になってベルトを失ったら“ただのレスラー”じゃダメなので。そのためにもこの2年が大事なんですよ。意外と時間がない(笑)」
それでも「今の自分の完成度は?」と聞くと「1億%!」と答える。注目してほしいのだから謙遜している場合ではないのだ。
「アイスリボンには同世代の選手もいるんですけど、高校に通っているからまずは学業優先。でも私はすべての時間をプロレスのために使えるので。今1億%だし、これからも1日1%ずつ成長していくつもりです。最終的に何%になってるのか、ちょっとケタが分からない(笑)」