濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
完成度は「1億%!」。17歳のチャンピオン・鈴季すずはプロレスに全てを捧ぐ。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2020/09/02 19:00
キャリア1年7カ月、17歳での戴冠となった鈴季すず。これからどんなレスラーになっていくのだろう。
本当の自分を隠すよりも。
団体の“顔”である藤本にすずが勝ったのは、今年3月の後楽園ホール大会だった。ピンクから黒にコスチュームを変え、“楽しい試合をする若手”から“実力派”にイメージチェンジすると王者・雪妃に挑戦を迫った。舞台は5月4日、横浜文化体育館に決まった。
だが、この大会はコロナ禍で延期となってしまう。無観客配信試合で雪妃との前哨戦が組まれても“本番”がいつになるのか見えない。挑戦者としてシリアスなムードを押し出したが、それは本当の自分ではなかった。
「カッコいい姿を見せようとしてたんですけど、素の自分を隠すのは苦しいし、うまくいかないもんだなって。カッコ悪くても自分をさらけ出したほうがいいんだって気づきました」
17歳のチャンピオン・鈴季すず。
“自粛明け”すぐの6月13日にタイトルマッチは行なわれ、すずは敗北を喫した。それでもあきらめずに7月の後楽園での挑戦者決定戦に勝ってみせた。口をついたのは「また鈴季すずか、と思う方も多いと思います」という言葉だった。いつも明るくて強気で前向きなエネルギーに満ちている彼女だが、勘がいいだけに周囲のムードを察しすぎてしまうのだろう。
「デビュー2年弱で3回目のシングル王座挑戦ですからね。自分がファンだったら“またか”って思っちゃうなって。だからここで負けたら、しばらくベルトには絡まないようにしようって決めてました」
そういう試合で結果を出し、17歳のチャンピオン・鈴季すずが誕生した。フィニッシュとなったジャーマン・スープレックス・ホールドのブリッジは高く、“その場飛び”のムーンサルト・プレスからも身体能力の高さが伝わってくる。加えて練習量が技の精度を裏打ちする。寮でプロレスの映像を見て、思い立ったらすぐ道場へ。1人でリングのロープを張って、スマートフォンで録画しながら新しい技や動きを試すという。