札幌ドームの監督室には……

　根本氏の自宅を訪問した際、夫人らからプレゼントされた宝物がある。根本氏のベースボールカード3種3枚と、オリジナルのテレホンカード1枚を手渡された。

　札幌ドームの監督室には、これまでの思い入れのある記念球が飾られている棚がある。

　薄暗いその一段に、根本氏は鎮座している。いくつかのウイニングボールに寄り添うように、ベースボールカードは立てかけられている。

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　重く深みのある599勝目を挙げ、帰ってきた札幌ドーム。監督室の「根本さん」に目をやり、しみじみと言葉をつないだ。

「根本さんを超えることなんてできていないし、できないけれどね。ただ599勝した時に、根本さんに『少しは頑張っているじゃないか』と言ってもらえている気がした」

　野球人生の系譜、野球人としての生き様にあこがれてきた。そんな根本氏の影と伴走してきた監督業で、少し近づけた実感が込み上げたのではないだろうか。

　600勝という区切りに達する直前、魂の中に「実在」する精霊と、そっと心を通わせた。栗山監督が授かった天命を傍らで見守る1人が、根本陸夫氏である。