草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
中日快進撃の中心はエース大野雄大。
マー君以来の4連続完投、不安はFA。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2020/08/27 11:40
23日のDeNA戦で4試合連続となる完投勝利を挙げた大野雄大。次回登板予定の30日に球団記録に並ぶことはできるか。
気になるエースのFA事情……。
男気にあふれ、実力を備える。そんな大野について、ドラゴンズファンのみならず気になっていることがある。今シーズン、晴れて国内FA権を取得。すでに昨年オフの段階で球団からは複数年契約のオファーもあったが、本人が単年での契約を選んだ経緯がある。
自分に自信があれば、中途半端な内容で事実上、権利を放棄するような契約を結ぶことはない。行使せずに残留するにせよ、行使して他球団と交渉するにせよ、選択の幅が広がる。だから単年を選んだことじたいは自然な流れといえるのだが、活躍すればするほどドラゴンズファンはやきもきするだろう。
いつものように東のあの球団が……。大野は京都出身。ということは……。いや、資金力でいえばもっと西の……。
かつては中日もFA補強に名乗りをあげる球団のひとつだったのだが、今は自チームの有力選手を引き留めるのが精いっぱい。今オフの最大の補強は「大野残留」ということになる。決して楽観できる状況ではないが、悲観ばかりでもない。希望の光は感情的なしこりが取り除かれたことだ。
「投げ抹消」を繰り返した2018年。
FA権取得に直結する、年度別の出場選手登録日数を見ると、目を引くのが2018年の7日である。登板は6試合。野球ファンならわかると思うが、これはいわゆる「投げ抹消」を繰り返したということだ。1日だけオマケはあるものの、登板当日のみ一軍に昇格し、翌日には二軍にUターン。ローテーションの谷間などに使われる手法で、よほどの好結果が出れば覆せるが、ほとんどは予定通りの1日限り。戦力として重視していないという扱いでもある。
大野は「結果を出せなかった(未勝利)自分が悪い」と当時の球団批判を封じているが、不要の烙印によって激しくプライドを傷つけられたことは想像に難くない。この年に通常の登録日数を稼ぎ出していれば、FA権を取得したのは翌'19年だった。
その昨シーズンはノーノーを成し遂げ、最優秀防御率のタイトルも獲得。そして今シーズンは4試合連続完投勝利を挙げているのだから、当時の判断が誤っていたことは明白だ。